「知財管理」誌

Vol.73 記事詳細

掲載巻(発行年) / 号 / 頁 73巻(2023年) / 5号 / 595頁
論文区分 判例と実務シリーズ(No. 540)
論文名 (No. 540)和解契約における不争義務と不使用取消審判請求─BOAST事件─
著者 外川奈美
抄録  知財高判令和4年2月10日[BOAST事件]は、和解契約上で不争義務を負う者が不使用取消審判を請求した事案で、特許庁はこの請求を認め、登録商標「BOAST」を取り消したが、知的財産高等裁判所は、不争義務違反であるとして信義則違反を理由に特許庁の成立審決を取り消した。商標法50条は、保護法益不存在の登録商標の整理の必要性と第三者の商標選択の余地を狭める等の弊害の除去を目的とした条文であるから、不使用取消審判は、公益性の高い制度ということができる。一方で、和解契約上の不争義務は、私人間の法的紛争を解決するためのもので、これを遵守することは私益保護を重視することになる。特許庁は50条の公益を優先したが、知財高裁は、私益保護を優先した。
 本稿では、私益と公益が衝突した場合に、比較衡量の上どちらを優先させるべきかを検討するとともに、不争義務に関する実務上の留意点についても述べることとする。
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