抄録 |
近年米国では特許の記載要件に関しての議論が続いている。バイオ医薬品の特許では、抗体などの一連の発明を属としてその機能によって発明を規定すること(機能的属クレーム)も多いが、近年連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)は、開示に対してクレームが広すぎるとしてそういった機能的属クレームの有効性を否定する判例を出している。2021年夏に出されたCAFCの判例であるJuno Therapeutics, Inc. v. Kite Pharma, Inc.(Juno判決)においても、最先端のがん治療法に関する特許の機能的属クレームが記載要件を満たさないとされた。本件関連特許では機能的に規定されたクレーム要素の例が二つ開示されているものの、CAFCは、その二例は単なる例示であり、2010年のAriad 判決で示されていた基準を満たさず、事後的な発明も広いクレームでカバーしようとしている、と判示した。CAFCの確認した記載要件に関する基準は流動的で、最先端のバイオテクノロジーに関してはより大きな開示が求められる傾向が窺える。現在本件は米国最高裁判所(SCOTUS)への上告請願がなされており、その判断が待たれている。 |