「知財管理」誌
Vol.73 記事詳細
掲載巻(発行年) / 号 / 頁 | 73巻(2023年) / 11号 / 1403頁 |
論文区分 | 資料 |
論文名 | 特許権侵害訴訟一回的解決の歴史 |
著者 | 近藤裕之 |
抄録 | 特許権は、その真価が問われるのは、特許権侵害訴訟の場面であろうと考えられる。特許権は、発明の対価として特許権者に最大20年間独占する権利を与えて同業他社の参入を防御することで経済的利益を享受できるようにしている。すなわち、同業他社が当該特許権を侵害するのであれば、それを排除する権利が与えられているのである。しかしながら、当該特許がそもそも認められるべきではないものに付与され、特許権者がそれに基づいて排他権を行使したとすれば、特許制度自体信頼を失うだけでなく、産業社会が混乱することにもなりかねない。キルビー事件をきっかけとして、特許権侵害訴訟における審理の一回的解決や迅速化が進み、特許法104条の3や104条の4の改正を経て、特許権侵害訴訟での無効の抗弁の可能化や再審の制限を行ってきたが、企業にとって、特に中小企業にとって訴訟の長期化は企業体力を奪う重大な問題であるから、審理期間についても迅速化するよう侵害訴訟中に特許権者と被疑侵害者が争えるようにすることで、両者の公平性と訴訟の迅速性が実現されてきたその歴史を総括する。 |