「知財管理」誌
Vol.72 記事詳細
掲載巻(発行年) / 号 / 頁 | 72巻(2022年) / 9号 / 1094頁 |
論文区分 | 判例と実務シリーズ(No. 533) |
論文名 | (No. 533) 他人の氏名が含まれる音商標について, 商標法4条1項8号該当性を否定した事例─音商標「マツモトキヨシ」審決取消訴訟事件─ |
著者 | 齊藤 整 |
抄録 | 本件は、「マツモトキヨシ」という言語的要素を含む音商標に係る商標登録出願(第35類、第44類)について、「他人の氏名を含む商標であって、かつ、その他人の承諾を得ているものとは認められない商標」(商標法4条1項8号)であることを理由とする拒絶審決がなされたものの、知財高裁において、当該音商標は同号の「他人の氏名」を含む商標にあたらないとして、同審決が取り消された事案である。他人の氏名と認識され得る要素を含む商標については、当該他人との間での商品等の出所の混同のおそれの有無や、いずれかが周知著名であるということなどは考慮されず、同号の趣旨が人格的利益の保護であることをもって当該他人の承諾を得ない限り登録を認めないとする判断が続いていたが、本判決では、同号は「出願人の商標登録を受ける利益」と「他人の氏名、名称等に係る人格的利益」の調整を図る趣旨の規定であるとして、取引の実情に照らし、4条1項8号の該当性が否定された。本稿では従前の事例と異なる点や実務上の留意点等について検討を行う。 |