「知財管理」誌
Vol.72 記事詳細
掲載巻(発行年) / 号 / 頁 | 72巻(2022年) / 8号 / 971頁 |
論文区分 | 判例と実務シリーズ(No. 532) |
論文名 | (No. 532) 特許権侵害と取締役の対第三者責任 |
著者 | 飯島 歩 |
抄録 | 大阪地方裁判所第21民事部(谷有恒裁判長)は、令和3年9月28日、他社の特許権を侵害した会社の取締役らに対し、会社法429条1項に基づき、侵害者である会社と同等の損害賠償責任を認める判決をした。この判決は、内閣の知的財産戦略本部の検討会で紹介されたことから多くの企業に注目され、また、動揺をもたらした。特に、専門家から非抵触の鑑定を得ながら、取締役が会社と同等の個人責任を問われた点は不安を生み、他方で、侵害者に対する新たな責任追及の手段を切り拓く判決とみる向きもある。しかし、この判決の判断枠組みは、取締役の対第三者責任の要件である任務懈怠や悪意重過失の把握において判例による会社法の解釈から乖離し、また、任務懈怠や悪意重過失のほか、因果関係にかかる認定判断にも欠落があると思われるため、判旨を一般化して実務の見直し等を検討するのは時期尚早と考えられる。 |