「知財管理」誌
Vol.72 記事詳細
掲載巻(発行年) / 号 / 頁 | 72巻(2022年) / 1号 / 19頁 |
論文区分 | 論説 |
論文名 | 「業として」の法的位置付けの再検討 ─令和3年商標法・意匠法改正を契機として─ |
著者 | 中澤直樹 |
抄録 | 令和3年5月、模倣品の個人輸入の増加に歯止めをかけるため、商標法・意匠法において、外国の仕出人を輸入の主体と見ることを可能とする改正がなされた。しかし、その実効性を得るには、税関において外国仕出人の「業として」要件の判断が必要となる。その容易化を図る策として、輸入者に「業として」要件の立証責任を負わせることが検討されているが、そのような策は、「「業として」でない」ことを違法性阻却事由として構成した場合の立証責任の分配と整合的となる。また、そのような法的位置付けの構成をとれば、税関は認定手続に入る段階で「業として」か否かを判断する必要がなくなり、少量でも認定手続を執る現行運用の正当性を裏付ける根拠にもなる。このような法的位置付けの構成は、個人が「業として」の行為に容易にかつ広く関与できることになった現在の社会状況に照らせば十分肯定できる。むしろ産業財産権制度が社会実態に合致することになるため、制度見直しの種々の場で議論されることを期待するものである。 |