「知財管理」誌
Vol.71 記事詳細
掲載巻(発行年) / 号 / 頁 | 71巻(2021年) / 4号 / 598頁 |
論文区分 | 海外注目判決(No. 59) |
論文名 | (No. 59) [米国]2020年FTC v. クアルコム控訴審判決 から見えるもの ─「鉄壁の知財モデル」その後─ |
著者 | 二又俊文 |
抄録 | モバイル・コミュニケーションの世界的リーダーであるクアルコムの事業の成功はさまざまな教訓に満ちている。その成功の影にはライバルからの幾多のチャレンジと、世界の競争当局からの執拗な挑戦があった。本稿では、米国FTC v. クアルコム事件に関する2019年5月21日カリフォルニア北部地裁判決と、一年後の2020年8月11日第9巡回区控訴審判決を比較検討する。地裁は反トラスト法(独占禁止法)違反、控訴審は反トラスト法違反ではないと正反対の判断をした。クアルコムの構築した鉄壁の知財モデルを糾弾した地裁判決に対して、控訴審は判断の誤謬と反トラスト法からの逸脱と厳しく批判している。何が二つの異なる判断を導いたかを検証しながら、実は激変する近時の産業競争構造のなかでは、クアルコムの先進的なマルチレイヤ―のビジネスモデルの光と影を見抜いた地裁判決にこそ反トラスト法の運用について先駆的意義があったのではないかと論ずる。 |