「知財管理」誌
Vol.71 記事詳細
掲載巻(発行年) / 号 / 頁 | 71巻(2021年) / 1号 / 5頁 |
論文区分 | 論説 |
論文名 | 欧州特許条約83条─パラメーター発明─ |
著者 | 佐伯奈美 |
抄録 | 欧州特許条約(EPC)には記載要件として二つの条文(EPC83条、EPC84条)がある。EPC83条は日本特許法でいう実施可能要件(36条4項1号)、EPC84条は日本特許法でいう明確性やサポート要件(36条6項1〜3号)とほぼ同じ内容の文言で規定されている。EPC83条違反は特許認可前の審査手続き中だけでなく、特許認可後の異議申立手続き中でも審査される一方、EPC84条違反は限られたケースのみに欧州特許庁での異議申立理由となり得る。このため記載要件に基づく異議理由がEPC83条違反に該当するか、EPC84条違反のみに該当するのか、は欧州異議申立手続きにおいてしばしば争点となる。よって異議申立人にとっては異議を認めさせるために、特許権者にとっては出願段階、異議段階の両方で適切な対応をするために、欧州での実施可能要件を理解しておく必要がある。本稿は特にパラメーター発明に関して実施可能要件違反が欧州特許庁審判で争われた事例を紹介し、それら実例を通して欧州特許庁で求められる実施可能要件を理解する一助となることを目的とする。 |