「知財管理」誌
Vol.71 記事詳細
掲載巻(発行年) / 号 / 頁 | 71巻(2021年) / 12号 / 1571頁 |
論文区分 | 論説 |
論文名 | AIがもたらす競争法への影響─デジタルカルテルからデジタル時代に 要請されるコンプライアンス体制まで─ |
著者 | 永口 学/石川哲平 |
抄録 | AIの進化はあらゆる分野に影響を及ぼしており、それは競争法の世界とて例外ではない。日本においても「アルゴリズム/AIと競争政策」が公正取引委員会より公表され、AIと競争法との関係についての関心が高まっている。カルテルについていえば、日本では伝統的にその成立には「意思の連絡」が必要であるとされており、その存在をどのように認定するかについて多くの議論がなされてきたが、AIを組み込んだアルゴリズムを用いれば人の意思が全く介在しない形でのカルテルの実行も可能となり得る。もっとも、現状、いわゆるデジタルカルテルといわれる事例であっても、人の意思の介在を認定することが可能な事例が多いと思われ(それは海外において問題となっている事例でも同様である。)、当面は伝統的な枠組みを維持した形での解決が図られることが予想される。むしろ、デジタル時代に対応したコンプライアンス体制を構築することが今後のスタンダードになる可能性もあり、企業においては法務部・知財部・そしてシステム担当部署が一体となった取組みを検討することが急務といえよう。 |