国際活動

WIPO-SCP (Standing Committee on the Law of Patents) 36th sessionへの参加

 2024年10月14日〜18日、スイス・ジュネーブで開催された世界知的所有権機関(World Intellectual Property Organization: WIPO)の第36回特許法常設委員会(Standing Committee on the Law of Patents: SCP)会合に、医薬・バイオテクノロジー委員会から白木良太委員長及び小柳邦生委員長代理が参加しました。  
 世界各国の政府機関(特に知財関係機関)代表者がメンバーとして、認定された政府間機関や非政府組織等からの代表がオブザーバーとして、かつては年2回会議が行われていましたが、2020年以降は年1回、Hybrid開催(現地参加とWeb経由参加)の形式で開催されています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行によりJIPAからもWeb経由での参加が続きましたが、昨年から再びジュネーブで現地参加を行っております。  
 SCP会合は、「特許権の例外及び制限」、「特許の質(異議申立制度を含む)」、「特許と健康」、「特許アドバイザーと顧客とのコミュニケーションの秘密保持」及び「技術移転」の5セッションからなり、各セッションにおいて、意見表明や情報共有が進められております。  
 JIPAは世界最大級の知財ユーザー団体として本会議に参加しており、日本製薬工業協会(製薬協)と連名で、特許制度があるからこそ人類の健康のためのイノベーションが促進され、また医薬品アクセスに対しては自発的な協力(voluntary collaboration)が重要であるとの主張、及び、国内製薬企業の医薬品アクセス向上の具体的な取り組みを紹介するステートメント(意見表明)を、事前に国際製薬団体連合会(IFPMA)や日本国特許庁とも相談の上、作成し、「特許と健康」および「技術移転」のセッションにおいてステートメントを発表しました。  
 さらに、「特許の質」のセッションにおけるAI関連の議論においても、重要なテーマであるため今後のさらなる議論を期待する旨のコメントを行い、日本の知財ユーザー団体であるJIPAのプレゼンスを発揮してきました。  
 以下、「特許と健康」のセッションについて主に報告します。本セッションの冒頭にメンバーの一般的な意見を表明するgeneral statementが行われ、その後、2つのトピックスに分けて議論が行われました。  
 最初のトピックスにおいては、途上国が公衆衛生を目的としてTRIPS協定の柔軟性を活用する際に政府が直面する制約と、関連する利害関係者が直面する制約についての議論が行われました。  
 各国代表及びオブザーバーが意見を表明し、JIPAもオブザーバーとしてステートメントを発表しました。JIPAステートメントでは、まず、近年、世界は新型コロナウイルス感染症のパンデミックという課題に直面しましたが、医薬研究への多額の投資や自発的なグローバルパートナーシップによる新型コロナウイルス感染症ワクチンなどの技術開発に対して特許制度が重要な役割を果たしたことを述べました。その上で、途上国では脆弱な医療制度や不十分なサプライチェーンなどの問題が医薬品へのアクセスを妨げている要因であると述べ、特許制度がイノベーションを促進するために不可欠であり、日本の製薬企業がイノベーションを通じて医薬品への世界的なアクセスを継続的に改善することに貢献している実例を二つ紹介しました。  
 2番目のトピックスにおいては、特許状況情報の公開データベースに関して、Pat-INFORMED、Medicine Patent Pool、及び韓国知的財産権情報サービスの利用に関するメンバー国の情報共有セッションが行われ、そのセッションにおいても、特許情報の公開データベースのひとつであるPat-INFORMEDへの日本の製薬企業の参画を紹介しました。  
 次回の第37回SCPにおける「特許と健康」のセッションでは、第36回と連続して、 公衆がアクセス可能な、医薬品とワクチンに関する特許情報のデータベースのアップデートが予定されています。また、Implementation of Development Agenda Recommendations 14(開発途上国および後発開発途上国への技術支援に関するWIPOの規定)のアップデートが予定されています。「技術移転」のセッションでは、健康・環境技術分野における産学連携の成功事例の研究が予定されています。  
 なお、例年のSCP会合では、各セッションの冒頭のgeneral statementにおいてメンバーの一般的な意見を表明に続いてオブザーバーの意見表明が行われておりましたが、今年は会議の冒頭に議長から、個々の意見表明は各セッションの中で行われる各議論について行ってほしい旨の会議進行についての変更アナウンスがありました。これに伴い、臨機応変の対応が必要となりましたが、準備したステートメントの内容は全て発表してきました。  
 JIPAはこれからも知財ユーザー団体の貴重な意見を世界に向けて発信していきます。
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