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国際活動
WIPO-SCP (Standing Committee on the Law of Patents) 34th sessionへの参加
2022年9月26日〜30日、スイス・ジュネーブで開催された世界知的所有権機関(World Intellectual Property Organization: WIPO)の第34回特許法常設委員会(Standing Committee on the Law of Patents: SCP)会合に、
医薬・バイオテクノロジー委員会から米田隆実委員長及び里山雅也委員長代理がWeb経由で参加しました。
世界各国の政府機関(特に知財関係機関)代表者がメンバーとして、認定された政府間機関や非政府組織1等からの代表がオブザーバーとして、従来年2回会議が行われていましたが、 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、一昨年及び昨年は年1回、Hybrid開催(現地参加とWeb経由参加)の形式で、時間を短縮して開催されました。本年は、開催形式こそHybrid開催でしたが、 従来と同様に午前・午後各3時間、5日間の会議が行われ、世界がCOVID-19流行前の状態に戻そうとする意欲が感じられました。
SCP会合は、「特許権の例外及び制限」、「特許の質(異議申立制度を含む)」、「特許と健康」、「特許アドバイザーと顧客とのコミュニケーションの秘密保持」及び「技術移転」の5セッションからなり、 各セッションにおいて、議論や情報共有が進められております。中でも、「特許と健康」のセッションにおいては、医薬・バイオテクノロジー分野の課題として、途上国側から主張される医薬品アクセス (Access to Medicines)の問題(特許が医薬品アクセスの障害となっているかどうかの議論)があります。特に、近年のCOVID-19の大流行により、知財権の放棄(TRIPS Waiver)2を求める声が強くなっており、 最近では、6月17日に開催された第12回世界貿易機関(World Trade Organization: WTO)閣僚会議(MC-12)3において、COVID-19ワクチンに関するTRIPS Waiver4 が合意され、現在はワクチン以外にCOVID-19診断薬や 治療薬にまで適用を広げるか協議されています。
JIPAは世界最大級の知財ユーザー団体として、これまで日本製薬工業協会5と連名でイノベーション誘発のための知財制度の重要性、医薬品アクセスの問題と知財制度の非関連性及び国内製薬企業の医薬品アクセス向上の具体的な取り組みを主張するステートメント(意見表明)を作成し、「特許と健康」のセッションにおいて、ステートメントを発表してきました。今回も同様に、 JIPAは製薬協と連名でステートメントを作成し、事前に国際製薬団体連合会6や日本国特許庁とも相談の上、会議に参加しました。
以下、2日目後半から3日目前半にかけて議論された「特許と健康」のセッションについて報告します。このセッションでは、general statement7に続いて、1) WIPO事務局が以前に作成した文書(31/5「特許及び医薬品や医療技術へのアクセスに関する既存の研究のレビュー」8)に対する前回会議に引き続いての意見表明、2) WIPO、WTO及びWHOの三機関協力による、COVID-19パンデミックに関する特許関連の活動の紹介、及び、3) 医薬品特許情報に公的に閲覧可能なデータベース情報の共有が議論されました。
まず、general statementでは、地域代表のアフリカグループ、グループB9及びCEBSグループ10から、上記課題に関する資料のアップデート及びそれぞれのプレゼンテーションに対する期待とサポートが表明されました。さらに、グループBから、知財制度にもたらされる強力なイノベーションエコシステム、特に自発的なライセンスの重要性が述べられました。
続いて、各国代表及びオブザーバーが意見を表明し、JIPAもオブザーバーとしてステートメントを発表しました。JIPAステートメントでは、未曽有のCOVID-19パンデミックに際して、製薬企業は驚くべき早いスピードでワクチン及び治療薬を開発したこと、そのために膨大なパートナーシップ及び技術移転が貢献したこと、COVID-19に限らずワクチン及び治療薬には、知財制度に基づく長年の努力・投資・パートナーとの自主的なコラボレーションが必要であったこと、世界中に医薬品を届ける妨げとなっているのは知財権ではなく他の要因であることを述べ、国内製薬企業がグローバルなパートナーシップを通じて発明に基づいて積極的に開発した技術や製品を使ってグローバルヘルスに貢献している例を紹介しました。
一つ目の議題である、WIPO事務局が以前に作成した文書(31/5「特許及び医薬品や医療技術へのアクセスに関する既存の研究のレビュー」)に対する前回会議に引き続いての意見表明では、事務局が文書SCP/31/5のアップデート(文書SCP/34/611)を紹介しました。この文書は、特許と医療製品や健康技術へのアクセスに関する2019年〜2021年の研究をレビューしたものであり、WIPO、WHO及びWTOの三機関や、その他の政府間組織により作成された研究や査読された学術研究も含まれています。
二つ目の議題である、WIPO、WTO及びWHOの三機関協力については、WTO担当者より、技術支援のための共同プラットフォームやワークショップといったCOVID-19パンデミックに関して特許関連の活動12が紹介されました。次に、WTO担当者より、2022年6月開催の第12回WTO閣僚会議における閣僚宣言及び文書SCP/34/6に記載されているワーキングペーパー等が紹介されました。続いて、WHO担当者より、COVID-19 対応決議や、アクセスを改善するための医薬品やその 他の医療技術の現地生産の強化に関する最近の WHO 決議等13に続けて、C-TAPイニシアティブ14についての紹介がありました。また、MPP担当者からは、MPP15についての紹介がありました。
三つ目の議題である、公的な医薬品特許情報データベースの情報共有については、中国特許情報センター16代表者からCOVID-19パンデミックの予防・治療に関する特許の情報共有プラットフォーム17の紹介がありました。
次回の第35回SCPは2023年10月16〜20日にジュネーブで開催予定であり、「特許と健康」のセッションでは、医薬品特許情報に公的に閲覧可能なデータベース情報の定期的な更新を延長するかどうかをWIPO事務局が検討するとともに、COVID-19の診断、予防及び治療のための医療技術のライセンス供与(強制実施権、自発的ライセンスを含む)実態について加盟国間の共有セッションを開催することとなりました。
JIPAはこれからも知財ユーザー団体の貴重な意見を世界に向けて発信していきます。
世界各国の政府機関(特に知財関係機関)代表者がメンバーとして、認定された政府間機関や非政府組織1等からの代表がオブザーバーとして、従来年2回会議が行われていましたが、 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、一昨年及び昨年は年1回、Hybrid開催(現地参加とWeb経由参加)の形式で、時間を短縮して開催されました。本年は、開催形式こそHybrid開催でしたが、 従来と同様に午前・午後各3時間、5日間の会議が行われ、世界がCOVID-19流行前の状態に戻そうとする意欲が感じられました。
SCP会合は、「特許権の例外及び制限」、「特許の質(異議申立制度を含む)」、「特許と健康」、「特許アドバイザーと顧客とのコミュニケーションの秘密保持」及び「技術移転」の5セッションからなり、 各セッションにおいて、議論や情報共有が進められております。中でも、「特許と健康」のセッションにおいては、医薬・バイオテクノロジー分野の課題として、途上国側から主張される医薬品アクセス (Access to Medicines)の問題(特許が医薬品アクセスの障害となっているかどうかの議論)があります。特に、近年のCOVID-19の大流行により、知財権の放棄(TRIPS Waiver)2を求める声が強くなっており、 最近では、6月17日に開催された第12回世界貿易機関(World Trade Organization: WTO)閣僚会議(MC-12)3において、COVID-19ワクチンに関するTRIPS Waiver4 が合意され、現在はワクチン以外にCOVID-19診断薬や 治療薬にまで適用を広げるか協議されています。
JIPAは世界最大級の知財ユーザー団体として、これまで日本製薬工業協会5と連名でイノベーション誘発のための知財制度の重要性、医薬品アクセスの問題と知財制度の非関連性及び国内製薬企業の医薬品アクセス向上の具体的な取り組みを主張するステートメント(意見表明)を作成し、「特許と健康」のセッションにおいて、ステートメントを発表してきました。今回も同様に、 JIPAは製薬協と連名でステートメントを作成し、事前に国際製薬団体連合会6や日本国特許庁とも相談の上、会議に参加しました。
以下、2日目後半から3日目前半にかけて議論された「特許と健康」のセッションについて報告します。このセッションでは、general statement7に続いて、1) WIPO事務局が以前に作成した文書(31/5「特許及び医薬品や医療技術へのアクセスに関する既存の研究のレビュー」8)に対する前回会議に引き続いての意見表明、2) WIPO、WTO及びWHOの三機関協力による、COVID-19パンデミックに関する特許関連の活動の紹介、及び、3) 医薬品特許情報に公的に閲覧可能なデータベース情報の共有が議論されました。
まず、general statementでは、地域代表のアフリカグループ、グループB9及びCEBSグループ10から、上記課題に関する資料のアップデート及びそれぞれのプレゼンテーションに対する期待とサポートが表明されました。さらに、グループBから、知財制度にもたらされる強力なイノベーションエコシステム、特に自発的なライセンスの重要性が述べられました。
続いて、各国代表及びオブザーバーが意見を表明し、JIPAもオブザーバーとしてステートメントを発表しました。JIPAステートメントでは、未曽有のCOVID-19パンデミックに際して、製薬企業は驚くべき早いスピードでワクチン及び治療薬を開発したこと、そのために膨大なパートナーシップ及び技術移転が貢献したこと、COVID-19に限らずワクチン及び治療薬には、知財制度に基づく長年の努力・投資・パートナーとの自主的なコラボレーションが必要であったこと、世界中に医薬品を届ける妨げとなっているのは知財権ではなく他の要因であることを述べ、国内製薬企業がグローバルなパートナーシップを通じて発明に基づいて積極的に開発した技術や製品を使ってグローバルヘルスに貢献している例を紹介しました。
一つ目の議題である、WIPO事務局が以前に作成した文書(31/5「特許及び医薬品や医療技術へのアクセスに関する既存の研究のレビュー」)に対する前回会議に引き続いての意見表明では、事務局が文書SCP/31/5のアップデート(文書SCP/34/611)を紹介しました。この文書は、特許と医療製品や健康技術へのアクセスに関する2019年〜2021年の研究をレビューしたものであり、WIPO、WHO及びWTOの三機関や、その他の政府間組織により作成された研究や査読された学術研究も含まれています。
二つ目の議題である、WIPO、WTO及びWHOの三機関協力については、WTO担当者より、技術支援のための共同プラットフォームやワークショップといったCOVID-19パンデミックに関して特許関連の活動12が紹介されました。次に、WTO担当者より、2022年6月開催の第12回WTO閣僚会議における閣僚宣言及び文書SCP/34/6に記載されているワーキングペーパー等が紹介されました。続いて、WHO担当者より、COVID-19 対応決議や、アクセスを改善するための医薬品やその 他の医療技術の現地生産の強化に関する最近の WHO 決議等13に続けて、C-TAPイニシアティブ14についての紹介がありました。また、MPP担当者からは、MPP15についての紹介がありました。
三つ目の議題である、公的な医薬品特許情報データベースの情報共有については、中国特許情報センター16代表者からCOVID-19パンデミックの予防・治療に関する特許の情報共有プラットフォーム17の紹介がありました。
次回の第35回SCPは2023年10月16〜20日にジュネーブで開催予定であり、「特許と健康」のセッションでは、医薬品特許情報に公的に閲覧可能なデータベース情報の定期的な更新を延長するかどうかをWIPO事務局が検討するとともに、COVID-19の診断、予防及び治療のための医療技術のライセンス供与(強制実施権、自発的ライセンスを含む)実態について加盟国間の共有セッションを開催することとなりました。
JIPAはこれからも知財ユーザー団体の貴重な意見を世界に向けて発信していきます。
- Accredited intergovernmental and non-governmental organizations (JIPAは発言権を有する認定NGO)
- TRIPS Waiver [the proposal led by India and South Africa (IP/C/W/669/Rev.1))
- https://www.wto.org/english/thewto_e/minist_e/mc12_e/mc12_e.htm
- https://docs.wto.org/dol2fe/Pages/SS/directdoc.aspx?filename=q:/WT/MIN22/31.pdf&Open=True
- 製薬協、Japan Pharmaceutical Manufacturers Association (JPMA)
- International Federation of Pharmaceutical Manufacturers & Associations (IFPMA)
- メンバーの一般的な意見を表明する
- https://www.wipo.int/edocs/mdocs/scp/en/scp_31/scp_31_5.pdf
- 先進国の国々
- 中央ヨーロッパ及びバルト諸国、Central European and Baltic States Group
- https://www.wipo.int/edocs/mdocs/scp/en/scp_34/scp_34_6.pdf
- https://www.wipo.int/edocs/mdocs/scp/en/scp_34/scp_34_health_d.pdf
- https://www.wipo.int/edocs/mdocs/scp/en/scp_34/scp_34_health_e.pdf
- https://www.wipo.int/edocs/mdocs/scp/en/scp_34/scp_34_b_health.pdf、知識、知的財産、臨床データのプールを通じて、自発的ライセンスを促進し、COVID-19 医療技術へのグローバルで公平なアクセスを実現することを目的とする。技術保有者等からの共有不足を解決するためのインセンティブが課題。
- https://www.wipo.int/edocs/mdocs/scp/en/scp_34/scp_34_c_health.pdf、HIV等に限らずCOVID-19治療においても、自発的ライセンス活動を通じて手頃な価格で低・中所得国への治療薬・製剤の提供促進を目指す組織。
- China Patent Information Center (CNPAT, http://www.cnpat.com.cn)
- https://www.wipo.int/edocs/mdocs/scp/en/scp_34/scp_34_a_health.pdf Web link確認日:2022/10/11