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「懲罰的損害賠償制度」の導入に強く反対!

                                                 2017年5月2日
                                                (一社)日本知的財産協会

近時、我が国の産業競争力の強化の観点から知財紛争システムの強化の議論がなされている。当協会としては、我が国産業の国際競争力において知的財産権の価値を如何に実現していくかということは根幹をなす課題であると考えており、産業の実情にあった知財紛争処理システムの在り方の議論を行うことは好ましいことであると考えている。

この議論の過程で一部から特許侵害に対する「懲罰的損害賠償制度」の導入を求める意見が出されている。しかし判例では、この制度が我が国における不法行為に基づく損害賠償制度の基本原則ないし基本理念と相いれないものとされており、また、産業の発達の観点からも現在の我が国の実情にそぐわないものであり、当協会としては同制度の導入に強く反対するものである。

現代においては、産業分野を越えてグローバルに進行する第四次産業革命への対応が産業界全体の課題であり、そこでは多様な製品・サービスが絡み合い、新たなイノベーション・価値が創出されている。これに伴って知的財産権を取り巻く環境も年々変化しており、業種によって程度の差はあれど、企業は多数の特許が交錯する中で事業活動を行わざるを得ない状況におかれている。このような状況においては特許侵害に関するシステムもこれらの現状に即して考察される必要があり、個々の特許の侵害に対する懲罰の議論よりも、特許権あるいは知的財産権の対象である技術が社会に提供している価値を如何に適正に当該技術の創出者に分配していくかが喫緊の重要な課題である。したがって、知的財産権の価値を適正に評価でき、産業界からの納得性が高まるような知財紛争処理システムを構築することこそが産業の発展にとって重要であり、「懲罰的損害賠償制度」の導入は、現実の価値を超えた保護を与える点において産業構造のバランスを失わせるものである。さらに、「懲罰的損害賠償制度」を導入することにより、適正な損害賠償を超えた懲罰的損害部分を目的とした訴訟が増加することが予想され、産業の健全な発展を阻害することが強く懸念される。

以上の様な理由から、わが国の産業競争力の礎たる知的財産権の価値を正当に評価し、健全な経済発展を目指す観点から、当協会は「懲罰的損害賠償制度」の導入に強く反対する。また、特許侵害を抑止する効果を達成するために独占禁止法違反における「課徴金」や労働基準法違反における「付加金」に類似した制度の導入も議論されているが、同様にこのような制度も産業の実情にそぐわず、大きな弊害を伴うものであることから、その導入については併せて強く反対する。

以 上

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[Update 2017-05-02 ]