「知財管理」誌
Vol.61 記事詳細
掲載巻(発行年) / 号 / 頁 | 61巻(2011年) / 12号 / 1777頁 |
論文区分 | 論説 |
論文名 | 知財高裁における均等侵害論のルネッサンス |
著者 | 塚原 朋一 |
抄録 | 長くわが国の特許権侵害訴訟は、冬の時代にあった。状況はまだ厳しいが、少なくとも知財高裁では、春が来つつあるといえそうだ。知財高裁では、最近、均等侵害を認める判決が目立ってきた。一昨年の飯村コートによる中空ゴルフヘッドの中間判決、今年3月に中野コート、6月に滝澤コートで、均等侵害を認めた。うち2件は第1要件「相違点が本質的部分でないこと」につき地裁が安易に本質的部分であると判断し、もう1件は均等を主張することさえ原告は躊躇して断念していたが、いずれも、平成10年の最判の判文に抵触せずに、巧みに第1要件をクリヤーしている。知財高裁は、今や、均等侵害の実質を備える事件には積極的に均等侵害を適用する流れにある。地裁でも、この流れを早急に取り入れ、第1要件非充足だけで排斥する安易な手法は、今後なるだろう。他方、企業の知財担当者は、こうした権利範囲の拡張的な解釈運用につき、適正な対策が急がれる。 |