抄録 |
米国特許出願においては、出願人が重要と思う情報を特許庁に開示しなければならないという情報開示義務がある。この情報開示義務において、重要な点は、(1)その情報が特許性に影響を及ぼす重要性(materiality)を有していること、(2)出願人がその情報を知っていたこと、及び(3)出願人が意図的にその情報を開示しなかったことである。ここで、この情報開示義務の問題を考えるに、(1)の情報の重要性は勿論大切である。しかし、この情報の重要性については、既に提示されている情報と同程度のものは除くとのことであり、その情報が同程度か否か、及びその情報が特許性の判断に重要な影響が及ぼすか否か等が主な争点となる。そして、その判断はやはりケースバイケースにならざるを得ない。それに対し、(2)の情報の認識については、その情報が当然知り得るべきであったものまで含むのか、もしくはその情報を知っていたと推測されるような場合には(3)の意図まで推測されるのかという点が問題となる。そして、この点は解釈の問題として普遍性を持つものである。従って、本稿では、法律問題として解釈に普遍性のある後者について検討を行う。特に、最近この点に答えるCAFCの判断がなされたので、本稿では、この判決の紹介を中心として情報の認識の問題を検討し、その中で、情報開示義務規定の背景、及び日本企業の対応に付いても考察を加える。 |