「知財管理」誌

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掲載巻(発行年) / 号 / 頁 73巻(2023年) / 7号 / 830頁
論文区分 論説
論文名 修理する権利と 製品の修理・加工における特許権の効力範囲
著者 町野 静
抄録  昨今、欧米を中心に電化製品などを「修理する権利」を消費者に認めるべきであるという動きが活発化している。しかし、製品の自由な修理が行われた場合、メーカーやその下請会社以外の許諾を得ない第三者が特許製品を修理して顧客に引き渡す行為が特許権侵害を構成するのではないかが問題となる。この点、特許製品が国内で適法に譲渡された場合には特許権は消尽し、その後の譲渡等に対して特許権を行使することはできない。他方で、特許製品に手を加えて譲渡をする行為に特許権が及ぶかどうかについては、特許製品の加工や部材の交換によって当該特許製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたものと認められるか否かにより決せられることが最高裁判決により示されている。したがって、特許製品を修理したり、加工する行為については、それが「同一性を欠く特許製品の新たな製造にあたるか」を基準に個別事情に応じて消尽の成否が判断されることになり、事案によっては、修理の実施と製品の引き渡しや、修理に用いられる部品の販売が特許権侵害を構成する場合もあると考えられる。そして、その判断においては製品の修理や環境保全に関する今後の法政策や社会の意識などの動向にも影響を受ける可能性があると思われる。
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