「知財管理」誌

Vol.71 記事詳細

掲載巻(発行年) / 号 / 頁 71巻(2021年) / 5号 / 664頁
論文区分 論説
論文名 欧州におけるライフサイエンス分野の 特許に対する異議申立の傾向
著者 武田恵枝
抄録  欧州では、特許権を無効化する手段として異議申立制度が日本よりも多く利用されている。特に、ライフサイエンス分野は、異議申立される特許の割合が他技術分野に比べて高い。また、異議申立の最終処分は、取消決定となる割合が日本よりも欧州の方が高い。したがって、企業にとって、欧州での異議申立の傾向を理解することは、自社の特許権を競合他社から守るためにも、また、競合他社の特許権を無効化するためにも、重要である。欧州特許庁は、異議申立手続の迅速化を図るため、2016年7月1日に新たに合理化された手続の運用を開始した。筆者所属先の解析チームは、2009〜2018年に欧州特許庁において異議申立期間が終了した特許に対して請求された異議申立について、特にライフサイエンス分野の特許に絞ってデータ収集および解析を行った。解析の結果、合理化された手続によって、欧州特許庁内での手続の迅速化が図られたこと、異議申立書に対する特許権者の答弁書提出期間の延長が例外的な理由を除いて認められなくなったことおよびそれらに応じて特許権者が異議戦略を変化させることにより、異議申立の早期決着が図られていることが分かる。
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