「知財管理」誌
Vol.66 記事詳細
掲載巻(発行年) / 号 / 頁 | 66巻(2016年) / 9号 / 1104頁 |
論文区分 | 論説 |
論文名 | 米国特許権保護の現状─特許権の制限とパテント・トロールへの影響─ |
著者 | 一色太郎 |
抄録 | 米国政府・裁判所は、2005年を境にそれまでのプロパテント方針を転換し、特許権を弱める方角に舵を切った。その背景には、パテント・トロールの台頭により、特許制度および訴訟制度の課題が浮き彫りとなったことがある。トロール対策の名のもとに数々の対策が講じられたが、特許権をトロールが権利者である場合に限って制限することはできないため、結果、米国特許権そのものも大きく制限されてきた。本稿では、米国特許権をめぐる変化を次の七つに整理し、特許権が制限されてゆく過程を追うとともに、一連の変化が特許係争、トロールおよび特許権取引に与える影響について解説する。(1)特許性基準の引き上げ、(2)特許無効化手続の強化、(3)損害賠償額の抑制、(4)差止基準の厳格化、(5)権利行使リスクの増大、(6)特許訴訟コストの低減、(7)裁判地選択権の制限。 今日、さらなるトロール対策の必要性を訴える声も聞かれるが、イノベーションの促進に大きく貢献してきた特許制度を過度に毀損することがないよう、米国政府・裁判所には冷静かつバランスのとれた対応を期待したい。 |