「知財管理」誌
Vol.66 記事詳細
掲載巻(発行年) / 号 / 頁 | 66巻(2016年) / 1号 / 79頁 |
論文区分 | 判例と実務シリーズ(No.455) |
論文名 | (No.455) 訂正による上位概念化─均等論によらない特許発明の技術的範囲の拡張か?─ |
著者 | 川田篤 |
抄録 | 特許請求の範囲を減縮する補正又は訂正において、明細書に明示的な記載のない上位概念を用いることは、いわゆる新規事項の追加に当たるであろうか。本件判決は、この問いかけに一つの示唆を与えるものである。 結論から言えば、均等侵害が認められるような実施態様を含み得る上位概念に減縮する補正又は訂正をするときは、明示的な記載はなくとも新規事項の追加に当たらない可能性が高いのではないかと考える。このような補正又は訂正により、均等論によれば意識的に除外したと認められかねない実施態様を、文言上の技術的範囲に取り込むことができるかもしれない。 本稿では、「ソルダーレジスト事件」に係る平成20年の知財高裁大合議判決により示された「新たな技術的事項を導入しないもの」との基準を踏まえ、その後の幾つかの裁判例を分析しながら、本件判決の射程を検討する。それとともに、均等侵害と認められるような実施態様を文言侵害の範囲から除外することなく、なお、その範囲にとどめることができるような補正又は訂正を模索する。 |