「知財管理」誌
Vol.65 記事詳細
掲載巻(発行年) / 号 / 頁 | 65巻(2015年) / 8号 / 1013頁 |
論文区分 | 論説 |
論文名 | 著作権の保護期間はどうあるべきか─TPP交渉を契機に考える─ |
著者 | 新 谷 由紀子/菊本 虔 |
抄録 | 著作権保護期間の20年延長問題については、日本では主に国際的な制度の協調の視点から議論が行われてきた。しかし、反対論が優勢で文化審議会で検討課題とされて以降約10年にもわたって変更されることはなかった。今般、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉でにわかに著作権保護期間の延長が焦点となり、この機会にその問題点について再考した。そもそも著作権は独占権を与えることでインセンティブを付与する一方、保護期間を限定することで、究極的には文化の発展という公益を増進させるということが目的である。この意味で保護期間は著作権を成立させる根本的な要素であり、慎重な検討が必要である。米国の裁判では、保護期間延長が表現の自由に対する制約の強化につながることも指摘された。本稿では、著作権保護期間に関する本質的な問題と現代社会への影響を考え合わせ、安易に著作権保護期間の延長を実施することの問題点を明らかにした。 |