「知財管理」誌
Vol.63 記事詳細
掲載巻(発行年) / 号 / 頁 | 63巻(2013年) / 3号 / 311頁 |
論文区分 | 論説 |
論文名 | 実施可能要件とサポート要件とが別個の要件として存在する意義 |
著者 | 末吉 剛 |
抄録 | 実施可能要件とサポート要件との関係については、両者を峻別する説と両者の目的は同一 であって表裏の関係にあるとする説があり、後者には、両者は同一の要件であって互換性があるとい う説も有力に唱えられている。しかし、両者の一方のみを充足しない例も存在する。例えば、物理学 上は動作が理解できるデバイスの発明であっても、それを実現するための技術が知られていない場合 には、サポート要件には適合するものの、実施可能要件には適合しない。その一方、クレームが明細 書における課題解決手段を的確に反映していない場合には、実施可能要件には適合するものの、サポ ート要件には適合しない。 実施可能要件及びサポート要件は、特許請求の範囲と発明の詳細な説明との関係を判断の対象とす る点で共通し、その判断には重なり合う部分が多い。しかし、一方のみを満たす例が存在することが 示すとおり、両者にはそれぞれ独立した意義があり、併存する意味がある。両要件が重なり合う場合 については、類型ごとに、何れの要件が優先するのかという点が実務上安定して運用されることが重 要と考える。 |