「知財管理」誌
Vol.60 記事詳細
掲載巻(発行年) / 号 / 頁 | 60巻(2010年) / 4号 / 547頁 |
論文区分 | 論説 |
論文名 | 医薬・化学発明における作用的構成「○○剤」について要件充足性が判断された事例――セボフルラン貯蔵方法事件―― |
著者 | 時岡恭平 |
抄録 | 本件は、特許請求の範囲に「ルイス酸抑制剤」という記載がある本件特許発明の技術的範 囲に、控訴人が使用する方法が属するか否かが争われた事件である。裁判所は、「ルイス酸抑制剤」 とは、ルイス酸を抑制するという物質自体の性質を有するのに加え、ルイス酸を抑制することにより 得られる作用効果を実施態様において奏するものである、という趣旨の認定をし、「ルイス酸抑制剤」 というためには、ルイス酸の抑制という作用(中和)とそれによって生じる効果(セボフルランの分 解防止)との間に因果関係が認められることを要するといった内容の判断をした。医薬をはじめとす る化学分野の組成物などの発明において多用されている「○○剤」という用語が、特許発明の技術的 範囲においてどのように解釈されるのかを判示した例として、クレーム解釈の実務において今後の参 考になると思われる。そこで、本件について紹介するとともに、本件をもとに構成要件の充足性、特 許法第70条の検討等を行った。 |