「知財管理」誌
Vol.60 記事詳細
掲載巻(発行年) / 号 / 頁 | 60巻(2010年) / 2号 / 169頁 |
論文区分 | 論説 |
論文名 | 職務発明にかかる補償金請求訴訟における無効理由斟酌の可否について |
著者 | 田村善之 |
抄録 | 従業者から提起された職務発明の承継を理由とする補償金請求訴訟において、使用者の側 から承継された特許権に無効理由が有ることを主張することができるかということが議論されてい る。しかし、無効理由があるがために特許法上、保護に値する発明でないのであれば、あえて補償金 請求を認めて、その発明に対するインセンティヴを与える必要はない。近時の裁判例のように、事実 上の利益を得ているか否かをメルクマールとする取扱いは、使用者が自己実施自体は無償で行えるこ とを前提にして、法的に排他的な地位を得たことによる利益に関して相当な対価を算定するという特 許法35条の構造に反している。問題のある発明に限って事後的に特許要件を吟味する余地を残すこと で、企業の現場における発明補償金の算定制度を効率的に運用するという観点からも、原則として無 効主張を許容すべきであると考える。 |