「知財管理」誌
Vol.60 記事詳細
掲載巻(発行年) / 号 / 頁 | 60巻(2010年) / 11号 / 1827頁 |
論文区分 | 論説 |
論文名 | 進歩性判断における公知技術の組合せ |
著者 | 中所昌司 |
抄録 | 本件は、特許権の侵害訴訟であり、被告の提出した進歩性欠如による特許無効の抗弁が認 められた事案である。 進歩性に関しては、知財高裁平成21年1月28日判決(回路用接続部材事件)の「当該発明が容易想 到であると判断するためには、…示唆等が存在することが必要であるというべきであるのは当然であ る。」という判示の意義が関心を集めている。しかし、その後、進歩性を否定するためには必ずしも 引用文献中に示唆が必要とされるものではないと読める判決(知財高裁平成22年4月19日)が出され、 また、本判決で東京地裁は、「示唆」について言及することなく、従来の審査基準に従って進歩性を 認めない判断をした。 この点、いわゆる「単なる寄せ集め」に近いような類型の場合には、各引用文献には、組合せに関 する示唆がないことも多いが、このような場合に進歩性を肯定することは不当である。したがって、 本判決は、判決文から読み取れる主張・立証内容の範囲では、判断手法及び結論において妥当なもの であると考える。 |