「知財管理」誌
Vol.56 記事詳細
掲載巻(発行年) / 号 / 頁 | 56巻(2006年) / 1号 / 37頁 |
論文区分 | 論説 |
論文名 | 専用実施権を設定した特許権者の差止請求権―最高裁判所(平成16年(受)第997号)平成17年6月17日第二小法廷判決― |
著者 | 嶋末和秀 |
抄録 | 特許権者が専用実施権を設定したことにより差止請求権を喪失するかという問題については、現行特許法の基礎となる昭和34年法律第121号の制定当初から議論があったが、学説上は差止請求権肯定説が多数であり、下級審判例でも昭和30年代から一貫して差止請求権肯定説が採用されていた。ところが、平成14年及び平成15年に言い渡された2件の東京地裁判決において差止請求権否定説が採用され、判例実務上の争いが生じた。このような状況の中で、最高裁は、平成17年6月17日、「特許権者は、その特許権について専用実施権を設定したときであっても、当該特許権に基づく差止請求権を行使することができる」との判断を示し、判例実務を統一した。本稿は、専用実施権を設定した特許権者の差止請求権を認めた上記最高裁判決を紹介しつつ、これまでの下級審判例の流れを振り返るとともに、残された問題についての検討を試みるものである。 |