「知財管理」誌
Vol.54 記事詳細
掲載巻(発行年) / 号 / 頁 | 54巻(2004年) / 8号 / 1147頁 |
論文区分 | 論説 |
論文名 | 知的資産と企業価値 |
著者 | 相澤朋子 |
抄録 | 本稿は、知的資産の企業価値への貢献度について産業別に分析したものである。1990年第1四半期から2002年第1四半期までのデータにより、トービンのq理論を用いての知的資産の企業価値創造への貢献度を定量化し、その推移を分析した。本稿では、投資財の費用以外に知的資産を形成するために犠牲となった有形・無形の費用を収益の減少をもたらす要素として加味した上で分析した。<br /> 結果として、知的資産の限界qが逓増してきた産業(化学工業、輸送用機械工業、電気機械工業)と逓減してきた産業(建設業、鉄鋼業、精密機械工業)にほぼ二分されたが、逓増した産業では特許出願件数が増加するか、またはその減少が小幅であった。こうした産業では、特許発明の量的拡大に加えてその質的向上や、特許以外のノウハウ等における質量両面の効果が相俟って知的資産の企業価値への貢献度を高めてきたと推測される。またこうした知的資産の貢献度が高まったと判断された産業では、知的資産を活用することによって生産量を増加させたり、コストの節約に繋がる効果が検出された。 |