「知財管理」誌
Vol.54 記事詳細
掲載巻(発行年) / 号 / 頁 | 54巻(2004年) / 6号 / 911頁 |
論文区分 | 特集(職務発明の相次ぐ巨額対価判決を踏まえて) |
論文名 | 職務発明制度改正法案の検証 |
著者 | 玉井克哉 |
抄録 | 職務発明制度に関わる特許法改正案の立案過程では、(1)発明対価に関して予測可能性を確保し、(2)個々の発明・発明者・企業に応じた多様な報償形態を認めることが、議論の焦点とされた。(1)については、裁判所の審査から具体的な対価の金額を除外するとの意見が退けられたものの、企業内でのプロセスの適否に「重きを置く」べきだとされた。また(2)については、給与・賞与・昇進や研究環境の改善という多様な形態で発明者に報いることも選択肢に入るとされていた。 ところが、国会に提出された法案は、そうした結論から現行法の線に向けて大幅に後退している。(1)については裁判所が独自に認定する「相当の対価」が依然として基準とされ、(2)についても一律性・硬直性が残り創意工夫の余地が乏しいものとなっている。 改正法案が立案過程の結論からこのように後退した背景に、一部法学者の特殊な意見を指摘できる。次の段階での早期の法改正に向け、そうした意見が影響力を持たないようにせねばならない。 |