「知財管理」誌

Vol.49 記事詳細

掲載巻(発行年) / 号 / 頁 49巻(1999年) / 10号 / 1359頁
論文区分 論説
論文名 続PL法と特許
著者 菅原正倫
抄録 我が国において、製造物責任(PL:Product Liability)法が誕生してほぼ4年が経過した。種々の機関で扱われるPL上の苦情処理件数がかなりの数にのぼるなど、その変化は小さくない。一方、米国に目をやれば、例えば実損の526倍の懲罰的賠償を科すPL判決も出ている。また、米国に輸出しているわけではない日本の部品メーカーが、一定の状況で米国の裁判管轄に服して米国でPL訴訟の当事者になるケースなど、注意すべき事例も生じている。我が国の実際の特許明細書を検討すると、依然として従来技術における事故の恐れ・危険性の指摘、さらに従来品=現状品への欠陥があることの攻撃、これと対照して本件発明の優秀性の主張等がなされている例が相当数ある。このような状況はPL訴訟が起こされたとき、製造者が被告として不利な立場に立たされる恐れがあることはもちろんであるが、これでは、ある発明が次には欠陥品扱いされることが繰り返されるという欠陥の永久連鎖を招き、よりよいものを生み出し積み重ねていこうとする特許制度の趣旨にもとる。順次誕生する個々の発明は、相対的にはそれぞれ完成されていると把握し、従来技術に傾倒することなく、例えば発明の分野・意図・内容といった発明自体に重きをおいた明細書の記載構成に変わっていくべきであろう。
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