「知財管理」誌

Vol.48 記事詳細

掲載巻(発行年) / 号 / 頁 48巻(1998年) / 3号 / 321頁
論文区分 特集(技術標準と知的財産)
論文名 特許と技術標準の共存可能性―社会領域論の提唱―
著者 藤野仁三
抄録 特許と技術標準が交錯するばあい、両者の調整方法の一つとして、特許権を一定の範囲内で制限することが考えられるが、現行法規はそのための根拠を提供していない。たとえば、特許法においては公共の利益を理由とした裁定実施権があるが、その発動は極めて難しい。独占禁止法のばあい、有効な特許が適正に権利行使されるかぎり、法の適用はない。特許権濫用もわが国での判決例では認められることは少ない。本稿では、特許権の排他性制限の根拠を検討するため、特許権および技術標準をそれぞれ私有領域、公共領域にぞくする財と位置づける。両者が交錯する部分を社会領域と定義し、その領域内では財の排他性が制限されるという概念を提起する。社会領域において特許権は、技術標準に由来する付加的な利益を享受する。そのような利益は特許権のもつ本来の価値ではなく、特許法による保護を受けることはできない。
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