「知財管理」誌

Vol.48 記事詳細

掲載巻(発行年) / 号 / 頁 48巻(1998年) / 1号 / 19頁
論文区分 論説
論文名 後発品開発による特許権侵害 ―東京地裁平成9年8月29日判決の検討を中心に―
著者 林田学
抄録 東京地判平成9年8月29日は、医薬品の後発品開発が特許法69条1項により後発品の特許権侵害にならない旨を判示したが疑問である。第一に、判旨は公益を理由とするが問題である。まず、特許法1条により特許権も公益により内在的制約を受けると考えているが、これは特許法1条の「もって」以下が立法の常套句であることを見落している。次に、公益の内容が明確にされていない。その点の主張立証が不十分であれば立証責任により被告敗訴となるはずである。第二に、特許権侵害を否定すると先発品の特許期間が事実上延長されてしまうことを判旨は特許法の解釈によって避けるべきだと考えているようだが、それは薬事行政の運用により解決されるべき問題であり、そう考えた方が昭和62年の存続期間の改正とも符合する。以上のような見地から特許侵害を肯定すると、本来的承認日までの逸失利益の損害賠償請求は認められるし、特許期間内だけでなく期間経過後の差止・廃棄請求も認める余地がある。
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