「知財管理」誌

Vol.48 記事詳細

掲載巻(発行年) / 号 / 頁 48巻(1998年) / 10号 / 1569頁
論文区分 論説
論文名 均等論と自由技術論―ボールスプライン軸受事件最高裁判決に思う―
著者 牛木理一
抄録 特許の「技術的範囲」に属するか否かを問題とする均等論を肯認する権利侵害事件において、置換容易性は出願時を基準とする従来の裁判例から、今回の最高裁判決が侵害行為時を基準とする説に変わったことは、原告の均等論の主張が下足からすくわれるようなかたちとなった。即ち、均等成立のための置換容易性を立証するために、原告が出願時の公知技術を証拠として提出したことが、被告は上告理由としていないにもかかわらず、最高裁によって自由技術の抗弁を主張すべきことを被告に促すような逆効果となったのである。差戻された東京高裁における審理では、本件特許発明の技術的範囲をどこまで拡張して解釈することができるのかの均等論の問題についてではなく、本件特許発明の技術的範囲をどこまで狭めて解釈するか、それとも特許権自体の有効性にかかわる自由技術の抗弁や権利の濫用の問題に発展する伝統的な議論が展開されることになるであろう。
Copyright (C) Japan Intellectual Property Association All Rights Reserved.