国際活動

第4回WIPO−PCTワーキンググループへの委員派遣

日本知的財産協会
国際第2委員会

 ジュネーブのWIPOにおいて、2010年6月6日から10日まで、PCTワーキンググループ(PCT-WG)が開催され、日本ユーザ代表として日本知的財産協会(JIPA)が参画の上、日本産業界の意見表明を行いました。このPCT-WGは、将来のPCT制度の発展に向けて、WIPO総会に提案すべき議題を、PCTの各締約国の政府・国際機関代表、およびユーザ団体が一堂に会して事前に協議する実務者レベルの国際会議で、2008年より開催され、今年で4回目になります。なお、JIPAからは太田国際第2委員長(積水化学)と永野国際第2副委員長(パナソニック)が参加しました。

 今回の会議においては、将来のPCT制度発展に向けて、大きく二つの視点からの議論、すなわち、(1)包括的な協議事項として、現状のPCT制度が抱える様々な課題を先進国・途上国、政府・ユーザの全ての立場からの意見を聴取し、その長期的な取り組みの方向性を取り纏める議題、(2)最小限資料への中国語文献の追加、天災・戦争等の不可抗力による期限徒過に対する救済条項の新設などの現行PCT規則における改善提案、について協議を行いました。JIPAは日本ユーザの視点から、これらの議題について意見表明を行い、特許庁・ユーザ双方にとってメリットのあるPCT制度の適切な発展に向けた国際的な議論に参加しました。特に(1)に関しては、現在検討が進められている第三者による情報提供制度の導入に対して、無関係な大量の資料が提出されることによる同制度の濫用についてユーザとして懸念を述べたところ、各国からも同様の意見が複数表明され、今後の継続検討に際して考慮されるよう議長最終サマリーの文書に明記されました。また(2)に関しては、日本ユーザを代表して、今回の東日本大震災発生後における各国関係機関の対応に謝意を表するとともに、出願人が制御し得ない状況下での手続期限徒過に対する救済につきPCT規則に一般条項を設けたいとの国際事務局提案に対して歓迎する旨を表明しました。各国からも同意する旨の意見が相次ぎ、後日詳細な規則条文案を整備したうえで今秋のPCT総会に提案され、正式規則として制定される予定となりました。なお会議期間中、途上国グループからは、PCT51条に基づく途上国への技術援助の具現化策検討を要請する意見が繰り返し主張され、今日のPCT制度が抱える南北問題の一端が垣間見られる事態も発生しました。

 次回のPCT-WGは2012年5月または6月に開催され、今回の議題の詳細を継続して協議する予定となっており、JIPAは今後とも、国際的な特許制度の調和に向けて、世界から期待されるユーザ団体としての意見を表明していく予定です。

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