国際活動

WIPO マドリッド作業部会(第19回)への参加

  • 会議風景(ジュネーブWIPO本部)
  • 会議室から参加したJIPA出席メンバー
    ※写真撮影時のみマスクを外しています。
 2021年11月15日(月)〜17日(水)、標章の国際登録に関するマドリッド制度の法的発展に関する作業部会第19回会合(以下、マドリッド作業部会)が開催されました。マドリッド作業部会は年に一度開催される国際会議で、国際商標登録制度に関するマドリッド協定議定書や同共通規則に関する課題の共有・規則改定等についての検討・議論が行われます。
 今回も昨年と同様に、COVID-19の影響を受けてオンラインとオフラインのハイブリッド方式での開催となり、マドリッド協定議定書加盟国のうち84カ国及び非加盟国1カ国の政府代表団や、1国際機関及び17商標関連国際団体が会議に参加しました(大半がオンライン参加)。日本からは、特許庁国際政策課の担当者らがオンラインで参加し、オブザーバーとして日本弁理士会、日本商標協会および日本知的財産協会(以下、JIPA)が参加しました。JIPAからは商標委員会の齋藤委員長(セコム)、齋藤(充)副委員長(SUBARU)、杉崎副委員長(武田薬品工業)、鶴見副委員長(日清製粉)、藤井副委員長(バンダイ)、藤本副委員長(DGホールディングス)、山下副委員長(ダイキン工業)の7名がPosition Paperの取りまとめのうえ、東京都内の会議室やそれぞれの自宅から、オンラインで会議に参加しました。

(Position PaperはWIPOホームページをご覧ください:https://www.wipo.int/meetings/en/details.jsp?meeting_id=66289)。

 本年度は、「中華商標協会の新規オブザーバー認定」、「暫定拒絶」、「標章の国際登録に関するマドリッド協定に関する議定書に基づく規則の改正案」、「従属性」、「スイスによる提案」及び「マドリッド制度への新言語導入提案」が議題に挙がり、いくつかの議題に対し会議上でJIPAから意見発信を行いました。JIPAから述べた意見の概要は次のとおりです。

  1. 従属性
     現在、マドリッド制度では国際登録日から5年以内に基礎出願・登録が縮減、拒絶、無効となった場合(セントラルアタック)それに連動して国際登録の一部または全部が取り消されるものと定められているところ、そのような基礎商標への従属性が、基礎商標の維持費用増加や国際登録の法的不確実性の原因となっているとの声が挙がっています。この課題を解決するために従属期間の短縮、国際登録の取消理由の減縮、従属性の自動的適用の撤廃の3点及びその組み合わせによるバランスの向上の提案が国際事務局からなされました。
     JIPAからは、「単純な従属性の緩和や撤廃がマドリッドシステムのバランス改善に貢献するかについては懸念を持つ。従属性を緩和する代わりに統一的な著名性の判断基準を導入するなど、正当な利用者を奨励し、不正な利用者を失望させるようなバランスの取れたマドリッドシステムの発展について十分に考慮すべきである」旨を発言しました。
     本議題の議論の結果として、作業部会は従属期間の5年から3年への短縮に賛意を示したうえで、次回以降のセッションに向けて次の2点の書面の作成を要求することとなりました。
    1. A) 本目的のためにプロトコルを補正する外交会議を招集することの可能性および本減縮の実施のためのその他のとりうる選択肢に関する書面
    2. B) Aとは別に従属性に関する更なる選択肢を模索する書面(下線部:JIPAの発言に影響を受けたと思われる事項)
     今後は、従属性の減縮やその他の選択肢について、議論を継続することになります。
  2. マドリッド制度への新言語導入提案
     現在、英語、フランス語、スペイン語が、マドリッド制度の手続言語として採用されていますが、中国語、ロシア語及びアラビア語をこれに追加するべきという提案が中国、ロシア語圏各国代表団及びアラビア語圏各国代表団からあり、国際事務局より、当該3言語を手続言語として導入する提案がなされました。
     JIPAからは、「1) 新言語導入の意義について、コンセンサスを形成すること、2) ユーザーの負担軽減のために、国際出願料金の値上げを伴わずに全包袋の英語翻訳を提供し、かつ当該英訳版を正本と同等の効果を有するものとして取り扱う旨を定めること、3) 導入後に多発することが予想される冒認出願の防止策及び影響を検討すること、について、再度検討を実施すべきである」旨を発言しました。
     本議題は、次回作業部会にて継続審議となり、下記3点について議論を行った旨の報告のみとなりました。
    1. A) 提案に含まれていた、マドリッド作業言語への新言語の導入の費用と技術的実施可能性及び他の関連する情報について承認する
    2. B) 国際事務局に提案書38段落目(マドリッド用語DB、機械翻訳等)について各国官庁及びWIPO加盟国、ユーザー団体との協議会の開催を継続して行うことを要求する
    3. C) 国際事務局へ前述の協議会を考慮した上で提案書39から60段落目(マドリッド用語DB強化詳細)について前進させるための提案書の準備を要求する(下線部:JIPAの発言に影響を受けたと思われる事項)
     今後は、各国官庁及びWIPO加盟国、ユーザー団体との協議会の開催を含め、手続言語の新規追加について議論を継続することになります。

 次回の作業部会の議題は、暫定拒絶通報の応答期間及び当該期間算出方法について、従属性の緩和について、新言語導入について等を予定しています。いずれも、日本ユーザーの関心が高い議題ですので、本作業部会にJIPAから委員を継続派遣し、日本ユーザーの意見を引き続き表明して参ります。

以上

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