国際活動

WIPO-SCP (Standing Committee on the Law of Patents) 31st sessionへの参加

 2019年12月2日〜5日、スイス・ジュネーブで開催されたWIPO第31回Standing Committee on the Law of Patents(SCP:特許法常設委員会)会合に、医薬バイオテクノロジー委員会から寺内 輝和委員長が参加しました。
 本会合では、ここ何年にもわたって、途上国から医薬品アクセス(Access to Medicines, ATM)改善のため、 TRIPS flexibilityを最大限活用すること(自由な特許性基準の設定や強制実施権の設定など)に加えて、 医薬品価格並びに医薬関連特許情報の透明化などを求める意見が続いています。
 今回も新薬創出における特許制度の重要性や日本の製薬企業のATM問題に対する取り組みについての意見を 会合に届けるため、日本国特許庁とも事前に連携したうえで、日本製薬工業協会と連名でステートメント (意見表明)を行いました。
 以下でステートメントを行いました特許と健康の議題について報告します。

特許と健康に関する議論
 特許と健康のセッションでは、general statementに加え、今回の会合のためにWIPO事務局が作成した 文書に対する意見表明、医薬品関連特許情報の透明化に寄与し得るデータベースの情報シェアリング セッションが行われました。
 まず、general statementでは、過去の会合と同様に、途上国側からは、Affordable/Accessibleな 医薬品と国際的な特許制度のバランスが重要であることが主張されました。これに対し、先進国側からは、 新薬開発にはインセンティブが必要であり、そのためには特許制度が重要である旨が引き続き主張されました。
 WIPO事務局の作成文書に対するステートメントでは、特に「SCP/31/5:医薬品とヘルステクノロジーへの アクセスと特許についての現存する研究のレビュー」に意見が集まりました。SCP/31/5は、(i) WIPO、WTO、 WHO等の政府間組織による関連する研究、(ii) 関連する経済関係の文献、(iii) 関連する法律関係の文献、 を対象に情報収集が行われ、各文献の内容が簡便にまとめられたものです。途上国側からは、本レビューを 高く評価するコメントがあがりました。また、今回のレビューでは、国連ハイレベルパネルレポート (UN HLPレポート)1)が対象になっていないことについて指摘があり、将来UN HLPレポートを含めることが 提案されました。一方、先進国側からは、本レビューが会合の直前に利用可能になったものであるため、 議論のためにはさらに検討の時間が必要との意見が出され、最終的に次回(第32回)で本議題が引き続き 議論されることが決まりました。
 医薬品関連特許情報データベースの情報シェアリングセッションでは、MeDsPaL (https://www.medspal.org/?page=1)、Pat-INFORMED(https://www.wipo.int/patinformed/)の 現状のアップデートがありました。特に、MeDsPaLを運営する非政府組織のMPP(Medicine Patent Pool)が 各国特許庁と連携してデータベースに収載するデータを収集している活動が紹介されました。この取組みは、 先進国・途上国双方から高く評価され、具体的な連携内容を本セッションで共有することが提案されました。 この提案はfuture workに採用され、関係する国家/地域の特許庁(の関係者)を次回(第32回)に招待して 議論することが決定しました。

 JIPAからも、general statementの場で準備していたステートメントを出しました。具体的には、新薬の 開発は途上国におけるATMの向上に重要であること、革新的な医薬品の開発は非常に困難性が高く、また、 成功確率が極めて低いため、イノベーションに対するインセンティブを失わないように特許制度を運用する ことが重要であること、ATM問題には特許以外の多数の要因が関与していると考えられること、この考えに 基づき日本の製薬企業がATM向上のために多数の取り組みを行っていること(事例としては、三大感染症で あるマラリアやその他の顧みられない熱帯病に対する取り組みを紹介)、そしてこの取組がATM向上に寄与 すると強く信じていることを主張しました。
 特許と健康のセッションでステートメントを出す非政府組織は、ほとんどが途上国側をサポートする組織 (KEI2)、MSF3)、TWN4)、MPP5)、HEP6)等)であり、先進国側をサポートするのは2団体のみ(JIPAとIFPMA7)) です。また、ATM改善に向けた取組みを具体的な事例を挙げて紹介しているのはJIPAだけです。そのため、本 セッションにおけるJIPAのステートメントは大変貴重であり、引き続き特許制度のユーザーである産業界の 事実に基づく取り組みを粘り強く紹介し、継続して先進国側の意見を後押しすることが、本会合の議論を健全 かつ建設的な方向に導き、最終的に適正な医薬品の特許保護の維持・向上につながるものと考えます。

 尚、今回の参加についての詳細は、追って知財管理にて報告の予定です。

1) 国連の主導によって組織された国連ハイレベル・パネル(UNHLP)によって検討が行われ、医薬品 アクセス改善のために2016年に国連に提出された勧告書(http://www.unsgaccessmeds.org/final-report
2) Knowledge Ecology International
3) Médecins Sans Frontières
4) Third World Network
5) Medicines Patent Pool
6) Health and Environment Program
7) International Federation of Pharmaceutical Manufacturers & Associations  

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