国際活動

WIPO-SCP (Standing Committee of the Law of Patents)
22nd sessionへの参加

 2015年7月27日〜31日、スイス・ジュネーブで開催されたWIPO第22回Standing Committee on the Law of Patents(SCP:特許法常設委員会)会合に、 医薬バイオテクノロジー委員会から新保 雅士 氏(委員長)を派遣しました。 この委員会は、特許法の国際的な発展に関して、先進国と途上国が会して問題を議論したり、 連携を進めたり、指針を与えたりするために、1998年に創設されたものです。年にほぼ1回開催され、世界各国の政府機関代表者、並びにオブザーバーとしてNGO等からの代表者が参加して行われます。JIPAは発言権をもつ公式オブザーバーです。最近は「Exceptions and limitations to patent rights(特許権の例外と制限)」、 「Parallel Import(並行輸入)」、「Quality of patents, including opposition systems(特許の質)」、「Compulsory License(強制実施権)」、「Patents and health(特許と健康)」、「Transfer of technology(技術移転)」、及び「Confidentiality of communications between clients and their patent advisors(クライアントと 特許アドバイザー間の秘密保持)」が主な議題となっています。特に途上国側は、特許の存在により、医薬品技術の途上国への移転が妨げられている、さらには途上国における医薬品の価格を押し上げているという主張の下、特許権を弱める方向での提案を行って来ています。また、前回は、「特許と健康」において、技術移転のために特許明細書に製品情報が詳しく記載されるべきとし、医薬品の有効成分のINN(国際一般名称)の明細書への開示や、明細書にサポートされていない広いマーカッシュクレームの問題等、 医薬分野に関連する新たな議題を取り上げて来ていることから、前々回、前回に引き続き、医薬・バイオテクノロジー委員会から派遣し、対応しました。

 今回の会合は、進歩性および開示十分性を中心とした「特許の質」がメインの議案になっていましたが、「特許と健康」、「技術移転」もOther Issuesとして含まれていたため、前回に続いて、「特許と健康」、「技術移転」に関連する産業界の取り組みや意見を必要に応じて表明できるように、日本製薬工業協会(製薬協)および国際製薬団体連合会(IFPMA)と連携してステートメント(意見表明)案を作成し、参加前に日本国特許庁や現地の日本政府代表等と共有し、会議に参加致しました。

今回のSCPは、議長であるルーマニア特許庁長官の流れの良いファシリテートにより、例年以上にオブザーバーであるNGO等も積極的に意見表明できる建設的な会合となりました。 途上国側はすべてのセッションにおいて、医薬品の途上国への技術移転、Public Healthの重要性と関連付け、医薬発明への高い進歩性判断基準の適用、開示十分性の観点からのマーカッシュクレームの問題、技術移転のための明細書へのINN開示や強制実施権の必要性などを主張していました。一方、「特許と健康」のセッションでは、日本政府代表等から、イノベーションの観点から医薬品のR&D活動へのインセンティブのために特許制度が重要であるとの意見表明があり、JIPAからも医薬品技術の特許保護が途上国の患者の ための継続的な新薬開発を可能にすることを強調するステートメントを出しました。具体的には、「優れた医薬品を世界中の患者に提供することが我々のミッションであり、 先進国と途上国が協力して実現しなければいけないこと;膨大な費用と時間をかけて開発される医薬品開発のインセンティブとして、先進国と途上国の両方で特許保護が必要であること;日本において物質特許制度の導入により日本発の医薬品の数が上昇したというファクト;日本の製薬企業がWIPO Re:Search、GHIT等への参加により、途上国における疾患に対する医薬品の開発に積極的に取り組んでいる現状」を発表しました。

 今回の会議では前回同様に、事前に日本国特許庁、現地の日本政府代表、製薬協等と協働しながら準備を行い、JIPAのステートメントを表明することができたことは、大きな 成果になりました。一方、今後は途上国側が主張する途上国における医薬品価格への特許のインパクトに対する有効な意見を発信して行く必要があると思います。

 写真は、WIPO知財部長、日本国特許庁を含めた日本政府代表団、JPAA(日本弁理士会)、APAA(アジア弁理士会)の方々とのもの、並びに会議場風景です。

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