国際活動
国際第1委員会 ブラジル調査団を派遣
ブラジルはBRICSの一員であり、近年、技術開発や製品の流通が活発となっており、多くの日本企業がブラジルに進出・投資を行ってきています。その一方で、地理的条件やポルトガル語という言語の壁もあり、まだ十分に知的財産関連の情報が入手できていない実情が存在しています。
国際第1委員会では、昨年度ブラジルの知財に関する調査を行い、ここ数年で、審査促進、法律整備等の動きがあるとの情報を入手しました。そこで、本年度も、引き続きブラジルの知財に関して、不明な点や深堀すべき点の情報を調査してきました。しかしながら、制度は存在するが、実際の運用は現地で聞いてみないと分からないといった回答が多数あり、国内で得られる情報には限界が来ている状況でした。
そこで、今回のブラジル調査団では、現地進出日系企業の商工会議所、現地民間企業、知財関係の官公庁や法律事務所を訪問することにより、ブラジルにおける知財制度運用についてのユーザーの声を聞くともに、昨年度の調査内容の確認、不明な点や深堀すべき点の情報を入手してまいりました。さらに、今後の動向に関しても意見交換を行うことにより、現地訪問先との連携体制の構築を図ってまいりました。
現地では、ブラジル日本商工会議所、JETROサンパウロ事務所、ペトロブラス(現地民間企業)、ブラジル特許庁(INPI)、ブラジル衛生監督局(ANVISA)、リオデジャネイロ連邦裁判所、リオデジャネイロ税関、現地法律事務所4箇所など計12団体を訪問しました。
ブラジル日本商工会議所では、現地日系企業社長の方々と面会し、ブラジルの知的財産関連での注目点、問題点についてお話を伺いました。特に模倣品対策、技術移転・技術情報の供与・輸出に関する規制について、問題点があることを認識しました。
ペトロブラス(現地民間企業)では、ブラジル現地企業が知財に関してどのようなスタンスで実務を行っているかについてのヒヤリングを行いました。具体的には、職務発明や営業秘密保護に関する取り扱いや、パテントポートフォリオ管理、特許権の事業への活用などに関して、有意義な情報を収集することができました。
ブラジル特許庁では、審査期間の短縮に向けた具体的な取り組み、EPO審査実務との関係について、当方からの質問に応えていただくと共に、PPHの導入や産業財産権法改正の動向についてもお話を伺うことができました。ブラジル特許庁も、現状抱えている種々の問題点は認識しており、我々は、政治的な要因や意見の分裂等により解決が遅れている状況を目の当たりにし、肌身で実務運用の難しさを感じることができました。
ブラジル衛生監督局では、審査に付される対象、審査ガイドライン、特許要件、審査期間等について、予め当方から送付した質問について丁寧にご回答いただきました。今回ご対応いただいた方の中には、ブラジリアから今回の打ち合わせのためリオデジャネイロまでお越しいただいた方もいらっしゃいました。通常このような待遇はあまりないとの現地代理人からのコメントをいただいたほど、非常に手厚い対応をいただいたと思います。
リオデジャネイロ連邦裁判所では、控訴裁判所の大法廷を見学させて頂き、また、裁判官の方々と、直に訴訟動向や訴訟における種々の状況について、意見交換させていただきました。ブラジル衛生監督局と同様に、我々の活動を理解いただき、通常では有りえないほどの多大なご協力をいただくことができました。
リオデジャネイロ税関では、模倣品の水際対策に関して、使用できる知的財産権の種類についての詳細な説明をいただきました。また、模倣品の有効な取り締まりのための、権利者側から税関への働きかけの方法として、自社の模倣品に関するレクチャー方法などを教えていただきました。知的財産侵害物品の輸入阻止に当たり、税関が有効に機能していることを実感できました。
以上のように、いずれの訪問先においても大変歓迎して頂き、短い時間ながらも活発な意見交換を行うことができました。今後のJIPA訪問団や先方の来日時における交流が期待できると考えます。
なお、今回の調査報告書は、後日資料として発行する予定です。
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ブラジル特許庁(INPI)
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日本商工会議所
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ブラジル衛生監督局(ANVISA)
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リオデジャネイロ連邦裁判所
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リオデジャネイロ税関
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ペトロブラス