国際活動

第4回上海・日中企業連携会議

2月の北京に続いて、上海で日中企業連携会を開催してきました。上海のカウンターパートナーは、「上海知識産権服務中心(Service center of Shanghai Intellectual Property= SSIP)」です。この機関は、上海知識産権局(Shanghai Intellectual Property Administration=SIPA)の仕事をしているところです。実質的なトップは李耀庭(Li Yao Ting)さん、眼光鋭い人です。事務局長役として、よく働く、許偉華(Xu Wei Hua)さんがいます。この二人と相談して、今回の会議の内容を決めました。

この会議の目的は、北京と同じ、「上海市知識産権服務中心」および「上海市知識産権局」と友好関係を保つことです。具体的には、年1回、シンポジウムを開催します。

北京にある「中国専利保護協会(Patent Protection Association of China)」は、中国における「日本知的財産協会」のようなものですが、上海の「上海市知識産権服務中心」は、日本の「発明協会」のような存在と言ったほうがいいでしょう。そして「上海市知識産権局」が「特許庁」に相当します。

活動資金を握っているのは、「上海市知識産権局」です。北京の「中国専利保護協会」に較べ、上海の機関は、潤沢なお金をもっています。地方政府の交付金で事業予算を賄っているせいでしょう。

シンポジウムは、今回で4回目になりますが、初めて上海を離れて、「南通市」で開催しました。上海の空港から、バスで2時間ほどのところにあります。揚子江デルタにある地方都市です。地方都市と思いきや、調べてみてびっくり、770万人も居ます。多くの人々が電動スクータで動き廻っていました。
  • オープニング
  • 上海知識産権服務中心 李さんの挨拶

会議は、オープニングセレモニーで始まりました。上海市知識産権局、上海市知識産権研究会、上海市知識産権局、南通市知識産権局と、順々に、硬い挨拶が行われました。

そして、日本知財協会の代表(僕のことです)も、やや硬い挨拶をしました。

それが終わって、すぐにディスカッションです。テーマは「戦略的特許網の構築」と「社内の知財教育」。2つの部屋で、熱心な討議が行われました。

参加企業は、上海電気(総合電機)、上海復旦微電子(エレクトロニクス)、上海廣電(ディスプレイ)、上海建設路橋機械説身(破砕機メーカー)、上海家化(化粧品)、信誼薬廠(医薬)、上海雷允上薬業(漢方薬)、上海生命科学研究院(バイオ)、信上海医薬工業研究院(薬学・国有)、

上海復星医薬(医薬)で、医薬関係が目立ちます。また、北京の会議に出てきた巨大企業よりも、すこし規模の小さな企業が多く参加しています。

  • 中国側リーダー、上海家化の王(Wang)さん
  • 上海廣電の宇(Yu)さん Patent Attorneyである

上海でも「女性パワー」は健在でした。小生は、「特許網の構築」の方の議論に加わりましたが、リーダーが写真の王さんでした。また、社員が2万人の大企業・上海廣電から出てきたのが、若き女性アトーニーの宇(Yu)さんでした。

彼女らがしっかりとしたプレゼンを行います。

宇さんの会社では、知財情報を重視しています。戦略の意思決定は、「知己知彼、百戦不殆」、日本語で「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」です。日本でも、ここまで言える企業は、なかなかないのではないかと思います。

特許情報の活用面では、上海復星医薬も上手な使い方をしています。種々のデータから「真実ではない情報、不確かな情報をふるい落とし、Informationを抽出する」「そのInformationをKnowledgeに変え、技術者&研究者に提供する」「同時にKnowledgeを会社幹部に提供し、戦略意思決定に役立ててもらう」といいます。すばらしいことです(KnowledgeをIntelligenceに変えたら、もっとよくなるとアドバイスしました)。

国家パワーもありました。信上海医薬工業研究院、生命科学研究院は国有企業です。前者は、年間100人近い修士と博士を送りだす人材源でもあり、国家の費用で開発した医薬品を商用化する企業でもあります。国家と強く結びついた、日本にはない企業です。ただ、悩みがあるそうです。研究者は、特許を出願する前に、研究論文として発表してしまうことがあるようで、ここは日本の大学と同じだなと思いました。

全般的に、中国は「国家の保護が篤い」と感じました。特許出願の費用の補助などの金銭面、特許調査でのサービスセンターの充実など、中国企業は、日本よりも遥かに恵まれています。人材育成・知財教育も、政府系機関におまかせで済む場合が多く、日本のように企業内でやる必要はなさそうです

また弁理士の仕事が日本よりも多岐にわたるように思いました。特許調査は、ほとんど弁理士が行っているようです。

朝9時半から16時過ぎまで、2つのグループに分かれて、ぎっしりと議論しました。そのあと、1時間ばかり、全体の質疑応答と日中双方のリーダーからの講評を実施。みんな満足顔で終わりました。とてもすばらしい会議が出来たと思います。

その後、レセプション。盛り上がりました。実は、前の日もレセプションをやっており、そこでも盛り上がっていたのですが。

印象としては、北京が「真面目」であるのに対し、上海は、「ややくだけていますが、パワフル」です。

  • 「知財教育」に関する議論 右側が中国側、左側が日本側
  • レセプションの風景
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