「知財管理」誌
Vol.55 記事詳細
掲載巻(発行年) / 号 / 頁 | 55巻(2005年) / 2号 / 221頁 |
論文区分 | 判例と実務シリーズ(No.314) |
論文名 | No.314 権利濫用の抗弁と訂正審決の確定-権利濫用の抗弁に対する再抗弁について- |
著者 | 福井宏司、木村達矢 |
抄録 | 本件は、第1審において、特許に無効理由が存在することが明らかであり、その特許権に基づく原告の請求は権利の濫用に当たり許されないとして請求棄却された事件について、控訴提起とともに特許庁に対し権利範囲の減縮を目的とする訂正審判請求をし、その認容審決が確定したことにより、侵害訴訟控訴審においては一部認容判決を得たという事案である。なお、被告は訂正認容審決後に無効審判請求をしているが、結局無効審判は不成立に終わっている。 キルビー判決(最高裁平成12年4月11日第三小法廷判決)以降、特許権侵害訴訟を提起された被告は、特許庁に対して無効審判請求をすることなく、侵害訴訟において「明らかな」無効理由の存在を権利濫用の抗弁として主張するケースが増加しており、その抗弁が認められるケースも多くなっている。このような場合に原告からその対抗手段として、特許庁に対して権利範囲を減縮することを目的とした訂正審判を請求することが今後増加することが予想される。 本件のように、第1審で、特許権に明らかな無効理由が存在するとして請求が棄却された後、訂正容認審決が確定し、控訴審において侵害が認められたケースは、本件が最初と思われる。 このような中で、訂正審判は無効審判に対する防御方法のほかに、権利濫用の抗弁に対する防御方法としての位置付けがクローズアップされてくる。 本事案は、裁判所において無効理由の判断がされるようになったキルビー判決後の、同種の事案の参考になるとともに、特許権侵害訴訟と無効審判・訂正審判の関係及びそれぞれの役割や存在意義を問い直す契機を含んでいるものと思われる。 |
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