「知財管理」誌
Vol.53 記事詳細
掲載巻(発行年) / 号 / 頁 | 53巻(2003年) / 9号 / 1465頁 |
論文区分 | 判例と実務シリーズ |
論文名 | No.298 差止仮処分決定後の無効審決確定に基づく過失責任―氷成形装置事件― |
著者 | 伊藤由布子 |
抄録 | 知的財産権を巡る紛争の早期解決の実効を図る手段として、製造、販売の差止めを求める仮処分は、商品サイクルの短縮化等に伴い年々その重要性を増している。本件は、特許権による差止仮処分決定に基づく権利行使後、特許庁にて無効審決がだされ、後にその無効審決が確定した場合において、生産、譲渡を差し止められた原告が、債権者であった被告に対し、当該権利行使等により生じた損害の賠償を求めた事件である。裁判所は、過失の推定を覆すに足る特段の事情が存在したと認めることはできず、被告の仮処分決定に基づく権利行使に過失があったとして、原告の損害賠償請求を容認した。過去の裁判例も概ね本件と同様に、仮処分決定に基づく権利行使後に、無効審決確定等により被保全権利が消滅した場合は、債権者に過失があったものと判断している。本件を通して、債権者の過失の有無の判断基準、特に債権者としての原特許権者が過失を免れ得る「特段の事情」とは何かについて考察し、仮処分を行う場合の注意点について言及する。 |