「知財管理」誌

Vol.53 記事詳細

掲載巻(発行年) / 号 / 頁 53巻(2003年) / 8号 / 1301頁
論文区分 判例と実務シリーズ
論文名 No.297  商標の包袋禁反言について―商標「Bear」や「ベアー」等が登録商標「BeaR」と非類似とされた事例―
著者 東尾正博
抄録 Y(被告、控訴人)は、熊の図柄と「SURF BOARDS」、「BEAR」の文字等を結合して成り、世界的に広く利用されてサーフブランド「ベアー」として日本でも周知な商標(日本でも登録)を、正当権利者からライセンスを受けてTシャツ等の襟ネームに表示し、かつ、Yの商号等とともに商品タグにも記載して使用し、併せてイ号標章「Bear」等を商品の一部に表示し、また商品の広告宣伝に使用していた。X(原告、被控訴人)は、Yによるイ号標章「Bear」等の使用を自己の登録商標「BeaR」(本件商標)の商標権侵害であるとしてその使用差止等を求めて提訴した。第1審はイ号標章「Bear」は本件商標「BeaR」と類似するとしてXの請求を認容した。しかし控訴審は、イ号標章「Bear」は本件商標「BeaR」と非類似であるとし、第1審判決を取消してXの請求を棄却した。即ち、控訴審は出願経過(拒絶理由通知に対する意見書での出願人の主張)などを参酌して、本件商標は他の「Bear」(熊)に関連付けられる多数の登録商標郡及び現に使用されている商標郡の中にあって、「最後のRが大文字のベアー」という特異なものとして看取され、観念され、そのようなものとしての識別力を発揮するものと解することが相当であるとし、諸般の一般的な取引事情及び具体的な取引事情を考慮して、取引者及び需要者がYの商品を衣類等の胸その他の部分に表示されたイ号標章「Bear」のみによって商品の出所を認識しているとは認め難く、本件商標「BeaR」を付した商品とイ号標章「Bear」等を付した商品との間で出所を混同するおそれがあると認めることはできないから、両商標は非類似であるとした。本件は出願経過を参酌した本件商標の識別性との関連における本件商標とイ号標章との類否が争点となり、また先使用の抗弁や権利濫用の抗弁の成否等、争点が多い事案である。本稿ではこのうち出願経過を参酌した包袋禁反言にテーマをしぼり、包袋禁反言適用について特許とは異なった商標特有の留意点や包袋禁反言が争われた他の裁判例、本件控訴審判決の位置付け等について考察する。
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