「知財管理」誌
Vol.53 記事詳細
掲載巻(発行年) / 号 / 頁 | 53巻(2003年) / 4号 / 579頁 |
論文区分 | 判例と実務シリーズ |
論文名 | No.293 不正競争防止法2条1項3号の規定に基づく差止・損害賠償請求の主体要件について |
著者 | 小谷悦司 |
抄録 | 携帯電話機の付属品の開発、製造販売を業とする原告(日本の企業)が2段折れ式の携帯電話機用アンテナに関し、台湾メーカーに製造を依頼し、そのメーカーより輸入して販売していたところ、その原告商品と形態が酷似する商品を被告が販売し始めたので、原告が被告に対し不正競争防止法2条1項3号、及び同法4条の規定に基づき損害賠償請求の訴えを提起した。しかし、実際のところ原告は台湾のメーカーに対し、単に「2段折れ式の携帯電話機用アンテナ」という抽象的アイデアを提示したのみで「擬態的な形態」を提示した形跡はなく、また、台湾のメーカーも自社で製造することなく、他の台湾のメーカーが製造した既存の2段折れ式の携帯電話機用アンテナを購入して原告に基づく、差止・損害賠償請求の主体となり得る要件である。「形態模倣の対象とされた商品を自ら資金・労力を投下して開発・商品化して市場に置いた者」とはいえないとして請求棄却された事例である。人件費が安い海外で製造させたものを輸入して販売するケースが増えている現況に鑑み、不正競争防止法2条1項3号の規定による保護を受けるために留意すべきことを考えてみたい。 |