抄録 |
昨今、知的財産権に対する社会の注目度は非常に高まっている。知的財産権の重要性が社会から認識され、しかも、現代のめまぐるしく動く経済活動に対応するには、適正かつ迅速な権利の実現が重要課題とされている。かかる状況を受けて、知的財産権に関する訴訟手続を見直す動きが非常に活発になっている。例えば、知的財産権の保護は国家的戦略として位置づけられ、平成14年12月に制定された知的財産基本法には、訴訟手続の一層の充実及び迅速化が明文で規定された。また、裁判所の知財専門部では、通常の民事訴訟以上に迅速な審理を目指して、計画審理が促進される状況にある。このように、知的財産権の訴訟手続の一層の迅速化、充実化が進められる状況において、本判決は重要な意義を有している。すなわち、本判決は、特許法104条の生産方法の推定規定の適用場面で、被控訴人らが、原審において主張していた製造方法を、控訴審において撤回し、これとは異なる製造方法を主張、立証しようとしたため、これらを「時機に後れた防御方法」であるとして、民事訴訟法157条1項に基づき却下した事案である。本判決の分析を通じて、具体的にいかなる場合に「時機に後れた防御方法」として却下されるか、今後の実務上の参考になる事例である。 |