「知財管理」誌

Vol.46 記事詳細

掲載巻(発行年) / 号 / 頁 46巻(1996年) / 5号 / 731頁
論文区分 論説
論文名 特許付与後の異議申立ての戦略とその留意点
著者 特許委員会第2小委員会
抄録 平成6年12月14日に特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)が公布され、平成8年1月1日からはいよいよ出願公告制度及び付与前異議申立制度を廃止して付与後異議申立制度を導入する法律が施行される。付与後異議申立制度は、迅速な権利付与を図る観点から、平成4年12月18日付け工業所有権審議会の特許法及び実用新案法の改正に関する答申において既にその概要が示されていたが、さらに平成6年に日米特許庁間でなされた合意を受けて、今般、施行されるに至ったものである。第1表は、最近10年間の特許についての出願公告件数、異議申立件数、処理件数に対する異議申立ての成立率を示したものである。異議申立件数は出願単位の件数である。昭和60年から平成6年の10年間で、異議申立率は平均2.7%に達し、異議申立成立率は平均38.2%を記録している。付与前異議申立制度は、意義申立人の活動に影響を与える特許の成立阻止に効果ある手段として、広範に活用されていたと言えよう。かように日本の特許制度の中で定着した異議申立制度がこの度全面的に改正され、もはや権利成立前に意義申立てをすることはかなわぬこととなり、それに伴って諸手続きも大幅に変更されるのであるから、会員各社においてはどのように対応すればよいか少なからず戸惑いがあるのではないか、例えば、付与後異議申立制度は無効審判制度に近いものとなったが、両者は本質的にどこが相違するのか、両者をどのように使い分けたらよいか、あるいは同時に改正された情報提供制度の利用が高まるとの観測があるが、情報提供はどのような場面で権利化阻止に有効に働くのか、といった疑問を抱えているのでははいかと推察している。そこで、特許委員会第2小委員会では、改正特許法、特許異議申立制度の運用の考え方等の資料を研究し、付与後異議申立制度の戦略として、制度の特徴、無効審判と異議申立ての得失、改正情報提供の活用等を解説し、意義申立人側がこれらの制度を活用する際に考慮すべき事項を整理して、各社が戦略を立てるヒントを提供し、あわせて特許権者の対応で留意すべき事項を本稿にまとめた。本稿で用いた略語をあらかじめ説明しておくと、「法」は平成8年1月1日施行の特許法を指し、また、「運用」は特許庁から平成7年5月に公表されている「特許異議申立制度の運用の考え方」を指している。
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