抄録 |
平成7年3月23日東京高裁は、東京地裁判決(東京地裁平成4年ワ第16565号、平成6年7月22日判決)を取り消し、同一発明について日独両国に特許を有するドイツの自動車部品メーカーBBS(ベー・ベー・エス)がドイツで販売した自動車のアルミホイールを、権利者よりどドイツで購入して日本に輸入・販売した業者は、日本特許を侵害しないと判決した(東京高裁平成6年ネ第3272号)。ある発明について二国で特許を有する権利者又はその許諾を受けた者により、その一方の国で拡布された特許に係る製品を、第三者が他方の国に輸入する行為(一般的にはこれを特許製品の並行輸入という)について、東京高裁BBS事件控訴審判決はこれまで我が国が一貫してとってきた特許製品の並行輸入に対する考え方を一変する衝撃的なものである。すなわち、外国において特許権者によって適法に拡布された特許製品が、我が国に無断で輸入されても、我が国における対応特許権を侵害することにはならないとしたのである。この判決がこのまま確定すれば、我が国の特許権の効力を著しく減弱せしめ、我が国企業が関与するライセンシングを困難ならしめ、もって我が国の産業界に尽大な悪影響を与えるので反対する。本小論文は特許委員会でこの問題について、特許権を活用する立場から、また実務的な側面から検討した結果をまとめたものである。 |