「知財管理」誌

Vol.46 記事詳細

掲載巻(発行年) / 号 / 頁 46巻(1996年) / 2号 / 147頁
論文区分 論説
論文名 特許権の国内的「用尽」と国際的消尽論 ―BBS並行輸入事件東京高裁判決批判―
著者 中島和雄
抄録 特許品の容認した過般の東京高裁第6民事部判決は、国際的にも突出した判断を示したものである。本判決は、並行特許権者の二重利得防止を政策論的立場とし、国内的消尽(用尽)が明文の規定なく特許法上に異論なく承認されていることとの類比において、国際的消尽を法解釈論上に承認したものである。しかし、二重利得防止論にはその妥当性につき疑問が存するほか、国内的消尽すなわち特許権者の拡布後の特許品に権利が及ばないことが異論なく承認されているのは、特許権は本質上そのように「用尽」する権利、換言すれば源泉供給の独占権だからであって、利益衡量の産物たる国際的消尽をわが国特許法上に承認し得る法的根拠は存しない。特許法2条3項が特許品の輸入を一般的に侵害としている以上、並行輸入問題は法の欠缺分野ではないから、慣習法や条理による裁判の余地もない。また、特許独立の原則はともかく、属地主義とは、一国における源泉供給の独占権たる特許権を国ごとに与える主義と解され、少なくともその精神は国際的消尽論とは相入れない。上告審の判断が待たれる。
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