抄録 |
旧ソビエト連邦の崩壊により、それぞれの新独立国家に特許出願をしたり、すでに登録された旧ソビエト連邦特許を新独立国家で新たに登録し直す必要が生じた。そこでロシア連邦の特許・商標委員会の第一副議長のビクターブリニコフが、新独立国家間の協力により発明の保護に関する煩雑さを少なくすることを提案し、新独立国家と世界知的所有権機関(WIPO)が協力してユーラシア特許条約(本条約)が起草された。その後、1994年2月17日にジュネーブのWIPOにおいて、エストニア、ラトビア、リトアニアのバルト三国とトルクメニスタンを除く旧ソビエト連邦の新独立国家11カ国(アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、グルジア、カザフスタン、キルギスタン、モルドバ、ロシア、タジキスタン、ウクライナ及びウズベキスタン)が本条約の寄託書に署名した。本条約は本条約の寄託書に署名した国に限らず、最低3カ国により批准された時から3カ月経過後に発効することとなっていたが、トルクメニスタン、ベルラーシ、タジキスタン及びロシアの4カ国が批准したため、1995年8月12日付けで本条約は発効した。しかし、本条約では実体審査や手続に関しての詳細は規則で定めるとされているが、その規則がいまだ制定されていない。従って本条約を直ちに利用することは困難と思われるが、本条約は1996年始めからの運用が期待されているので、現在までに判明している本条約の内容を紹介する。なお、本稿は石丸(セントラル硝子(株))と中山(日本合成ゴム(株))が担当した。 |