抄録 |
法律家が、電子決済システムのセキュリティ技術にまで踏み込んだ議論をするのは難しい面がある。しかし、法的側面からの問題提起もなく技術優先で電子決済システムの開発が進めば、従来の取引にも混乱が生じ、結局はその”つけ”が消費者に回されてくる可能性がある。キーボードと画面操作によるシステム取引分野(非対面・ペーパーレス取引)では、消費者保護のためには不平等な約款へのき性も考慮する必要がある。基本理念なしに作ってしまった社会システムは、基本設計をきちんとしなかったシステム開発と同様で後からの修正は極めて難しい。特に「電子マネー」のような社会公共的基盤(インフラストラクチャー)にわたると共に、長期的に影響がおよぶことがはっきりしている場合は、従来の取引や社会生活も含め、技術開発以前に法的理念や伝統的な考え方とどのような関係にたつかを検討しておくべきである。ネットワークの発展と特質を前提に、動態的セキュリティの合意(暗号の利用なども含めての安全確保手続合意)を中心として、電子決済システムにおける秘密保全(不正競争防止法・通信の秘密)保護のあり方についても方向性を見出したい。インターネットの電子決済システムへの利用については慎重な対応をすべきと考える。 |