「知財管理」誌

Vol.46 記事詳細

掲載巻(発行年) / 号 / 頁 46巻(1996年) / 10号 / 1597頁
論文区分 論説
論文名 知的財産権での権利行使に関する米国判例(その1)―特許が有効な場合/無効な場合における留意点―
著者 ライセンス委員会第1小委員会
抄録 知的財産権特に特許権の所有者は権利の上には眠らず、その活用を望む。競争者に対して優位に立とうとする権利者は、独占を図るか、競争者にライセンス(拘束条件、ロイヤルティ付き)を与えるか又はライセンスの無い侵害者には差止めを求める。金銭収益を主な目的とする権利者は、他者にライセンス(独占、非独占)を与えて得る実施料を最大にしようとし、特許侵害者には損害賠償を求めていく。米国でこれら権利行使をするには、特許などの権利が有効なことが前提である。そして、有効な特許等での特許侵害者に対する権利行使、すなわち、侵害者(侵害者本人、教唆者、幇助者)に対する警告、ライセンス許諾、製造使用販売の禁止、侵害訴訟(差止め、損害賠償)は、権利濫用(ミスユース)、反トラスト法違反とならない限り自由である。しかし、権利行使をする知的財産が無効な場合は問題である。米国では、特許に無効原因があるとき、米国特許商標局(「特許庁」)での出願公告拒絶、米国政府からの取消訴訟(Cancellation Suit)、第三者からの再審査(Reexamination)があるが、それでも無効原因の有るものも特許として成立していることもある。成立した特許には特許有効との推定が働き、それに異議をとなえるものは無効性を明白かつ説得力ある証拠での立証(clear and convincing evidenceでの立証)をせねばならない。米国では、権利者が特許権などで権利行使してくるとき、権利行使される側は警告・侵害訴訟に対しては特許非侵害・無効で反論し、さらに反訴として特許ミスユース乃至反トラスト法違反のクレームを行うこともある。逆に侵害と言われる者、特許権を振りかざされビジネスの妨げとなると考える者は、自ら特許権者に対して特許非侵害・特許無効の確認訴訟、さらには特許ミスユース、反トラスト法違反行為として、その差止め・損害賠償の請求を行うこともある。本稿では、米国での権利行使に関する問題、つまり、知的財産権特に特許が有効な場合に特許権者はどれだけ強い態度がとれるか、逆に特許が無効となる場合の問題として、特許無効の原因殊に不公正行為による特許無効、無効特許での権利行使の効果殊に反トラスト法違反行為などを、判例をもとにして検討してみる。
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