外国特許ニュース

中東編～ US Special 301条　監視国の状況

　2020年４月29日，米国通商代表部（USTR）から，US Special301条の最新レポートが発行されました^１）。
　このSpecial301条レポートは，アメリカ合衆国が，知的財産権の保護状況や公平な市場アクセス状況などを調査し，警戒レベルを「優先国」，「優先監視国」，「監視国」の３段階に分けて，その状況を報告するもので，各国における知財保護状況などを読み取ることができます。
　今回，国際第４委員会では，「中東編」と題し，2020年度版　Special301条において取り上げられた，「中東諸国（サウジアラビア，クウェート，レバノン，アラブ首長国連邦，トルコ）」について，知財視点から，概要を纏めましたので，是非ご参照下さい。
　2020年度版では，著作権保護体制の強化などを受け，クウェートが，優先監視国から監視国へランク変動があったものの，サウジアラビア，レバノン，アラブ首長国連邦，トルコでは，「監視国」が維持されました。各国ごとにその要因は異なるものの，その多くが，医薬品，模倣品・海賊版保護，および国際制度との調和に改善の余地があることが指摘されており，各国の今後の動向が注目されます。

【米国からの主な指摘事項】

医薬品について
　医薬品の販売承認テストのデータが，競合（後発医薬品会社等）の承認テスト時に開示されてしまうなど医薬品の権利保護に対する懸念が示されています。
模倣品・著作権違反（海賊版）について
　押収品が廃棄されずに市場に出回るなど，模倣品対策が十分ではない例が指摘されています。また，海賊版チャンネルについての対応に言及があります。
知財制度（条約批准含む）について
　著作権管理団体が無い国への指摘や，知的財産権に関する条約を批准していない国への指摘があります。

　国際第４委員会では，今回の中東編に続き，ASEAN，インドについてのSpecial301条関連のニュースも順次お届けします。
　何か新しい情報があった場合も情報発信します。

監視ランク	優先監視	監視
国	サウジアラビア	クウェート	レバノン	アラブ首長国連合	トルコ
国
前年度との比較	変化なし（維持）	優先監視国から改善	変化なし（維持）	変化なし（維持）	変化なし（維持）
評価する点	・全土に及ぶIP保護等の改善措置	・著作権保護体制の強化（2019年著作権法／施行規則の可決）	・国家IP戦略の起案（2019年）	・４つの首長国でのレイドによる模倣品押収等	・知的財産権法改正を含む 2016年以降のIP体制強化
主な懸念点（改善余地あり）	・医薬品の販売承認に向けた非公開テストデータ保護が不十分・オンラインでの違法コピー措置が不十分	・不明確な法律規定（例：定義，保護範囲，例外範囲）	・各種国際条約への加盟・遵守が不十分	・米国で特許保護を受けている医薬品のジェネリック製品の国内製造許可・首長国間や執行組織間で，権利執行の態様がバラバラ。・押収した模倣品の廃棄が為されていないケースあり。	・IP保護と執行状況・医薬品などに関する強制ライセンスの拡大裁量権
主な奨励点	・著作権侵害対策の強化（特にオンライン）	・法律規定の明確化・国際基準との整合・知的財産権による取締り，および体制強化（特に，商標・著作権）	以下条約等の批准。①パリ条約1～12条，②商標法に関するシンガポール条約，③ニース協定に関する知的財産条約，④ベルヌ条約と WIPOに係る著作権条約，⑤特許協力条約，⑥マドリッド議定書，⑦WIPO公演および表音文字条約への参加	・著作権保護団体の設立	・潜在的な製薬特許紛争の早期解決に向けた仕組み整備・海賊版の取締り強化（オンライン海賊版の取締り含む）・知的財産権執行能力の強化

注　記
1） https://ustr.gov/sites/default/files/2020_Special_301_Report.pdf

（参照日：2020年７月31日）

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