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専門委員会成果物
長年続く商慣行を適用したクレームは,抽象的アイディアであるとして特許適格性がないと判断された事例
CAFC判決 2020年5月14日Electronic Communication Technologies, LLC v. ShoppersChoice.com, LLC
[経緯]
Electronic Communication Technologies, LLC(E社)は自動通知システムに関する特許9,373,261(’261特許)の特許権者である。ShoppersChoice.com, LLC(S社)が’261特許のクレーム11を侵害しているとして,E社はS社を提訴した。クレーム11は,荷物の配達の際に位置情報等をモバイル端末で監視,通知するシステムに関するものである。
S社は,クレーム11は米国特許法101条における特許適格性を有しないという申し立てを行い,地裁はこの申立てを認める判決をした。E社はこの判決を不服としCAFCへ控訴を行った。
S社は,クレーム11は米国特許法101条における特許適格性を有しないという申し立てを行い,地裁はこの申立てを認める判決をした。E社はこの判決を不服としCAFCへ控訴を行った。
[CAFCの判断]
CAFCはAlice最高裁判決(Alice Corp. Pty. Ltd. v. CLS Bank Int’l, 573 U.S. 208, 216 (2014))の判断基準における(A)ステップ1及び(B)ステップ2を以下の通り判断し,’261特許のクレーム11は,特許法101条における特許適格性を有しないと判決を下した。 (A)ステップ1の判断
荷物の集荷または配送を事前に通知するように,あるいは荷物の配送状況を顧客に通知するように設計された商慣行は,少なくとも数十年前から行われている。このような長年続く商慣行を従来のコンピューターやプログラムコードで記載するクレーム11は抽象的アイディアであると,CAFCは判示した。
E社は’261特許が許可通知を受けたときに,審査官に101条の観点で再確認を要求し,そのうえでUSPTOはクレーム11が特許適格であるという認定を行っていた為,’261特許は適格性があると反論した。しかし,CAFCは,審査手続きにおける審査観点は,クレーム11の保護対象とは関係なく,クレーム11が長年続く商慣行に関係しているという事実を否定していないとした。
(B)ステップ2の判断
クレーム11は一般性のレベルが高く,かつ機能的な用語で記述されている。上記Alice最高裁判決では,明細書に照らして理解されるクレームが,必要とされる情報を収集,送信,および表示するために既存する従来のコンピューター,ネットワーク,およびディスプレイテクノロジー以外のものを必要としてなかったため,101条に基づいて不適格とされている。したがって,本件においても,クレーム11は,当該判決において特定されている抽象的なアイディアを適用しているだけであり,抽象的アイディアを特許適格な出願に変換するのに十分な発明が含まれていないと,CAFCは結論付けた。
以上より,CAFCは地裁の判決を支持し原告の訴えを棄却した。
(成田 洵)
