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専門委員会成果物
再発行特許にて追加されたクレームが原特許に開示されていない発明であるとして再発行クレームを無効であると判断した事例
CAFC判決 2019年6月17日Forum US, Inc. et al. v. Flow Valve, LLC, et al.
[経緯]
Forum US, Inc.(Forum社)は,Flow Valve, LLC(Flow社)が所有する,切削加工中に加工物を保持する器具に関する再発行特許45,878(’878特許)について,原特許に開示されていない発明がクレームに追加されているため特許法251条(再発行出願には新規事項を追加してはならない旨を規定)に違反しているとして,無効の宣言を求める確認判決訴訟を起こした。
’878特許の明細書の記載及び図面は原特許から変更はされていないが,7つのクレームが追加されている。
’878特許の明細書の記載および図面には,パイプ継手(加工物)を保持する器具として,旋盤チャックに取り付けるための複数のarbor(工具を取り付ける小軸)を有する器具のみが開示されている。 そのため,原特許においては,器具が複数の「arborを有すること」がクレームの構成要件として含まれていたが,’878特許では,arborを構成要件に含まないクレームが新たに加えられた。
Forum社は,特許にはarborを有していない器具は開示されておらず,再発行クレームは不当に原特許クレームを広げるものであり特許法251条の原特許要件に違反しているとして再発行クレームは無効であるとの略式判決を要求した。
Flow社は,当業者であれば特許からarborを有する実施形態,およびarborを有さない実施形態からなる複数の発明が理解できるとする旨の経験豊富な機械工の宣言書(Iafrate宣言書)を用いて反論を行った。
地裁は,再発行特許の明細書の記載および図面には,再発行クレームに係る発明が明示的かつ明確に示されていないとしてForum社の主張を認めた。
Flow社はこの判決を不服として,CAFCに控訴した。
Flow社はarborがない実施形態が原特許に開示されていないことについて争っていない。その代わりに,Iafrate宣言書を用いて議論を行っている。これに対してCAFCは,当業者がarborを有さない 器具の発明は実現可能であると理解したとしても,上記2つの判決で示された基準を満たすには不十分であると判断した。
’878特許の明細書の記載及び図面は原特許から変更はされていないが,7つのクレームが追加されている。
’878特許の明細書の記載および図面には,パイプ継手(加工物)を保持する器具として,旋盤チャックに取り付けるための複数のarbor(工具を取り付ける小軸)を有する器具のみが開示されている。 そのため,原特許においては,器具が複数の「arborを有すること」がクレームの構成要件として含まれていたが,’878特許では,arborを構成要件に含まないクレームが新たに加えられた。
Forum社は,特許にはarborを有していない器具は開示されておらず,再発行クレームは不当に原特許クレームを広げるものであり特許法251条の原特許要件に違反しているとして再発行クレームは無効であるとの略式判決を要求した。
Flow社は,当業者であれば特許からarborを有する実施形態,およびarborを有さない実施形態からなる複数の発明が理解できるとする旨の経験豊富な機械工の宣言書(Iafrate宣言書)を用いて反論を行った。
地裁は,再発行特許の明細書の記載および図面には,再発行クレームに係る発明が明示的かつ明確に示されていないとしてForum社の主張を認めた。
Flow社はこの判決を不服として,CAFCに控訴した。
[CAFCの判断]
CAFCは,再発行特許によって包含される発明は,原特許に包含され,かつ保護されることを意図していたことが特許の文面から明らかでなければならない,とした判決 (U.S. Industrial Chemicals, Inc. v. Carbide & Carbon Chemicals Corp., 315 U.S. 668, 678),および,新たにクレームされた発明が原特許中においてはっきりかつ明確に (clearly and unequivocally)別の発明として開示されていなければならないとした判決(Antares Pharma, Inc. v. Medac Pharma Inc., 771 F.3d 1354)を適用し,再発行クレームは無効であると判断した。Flow社はarborがない実施形態が原特許に開示されていないことについて争っていない。その代わりに,Iafrate宣言書を用いて議論を行っている。これに対してCAFCは,当業者がarborを有さない 器具の発明は実現可能であると理解したとしても,上記2つの判決で示された基準を満たすには不十分であると判断した。
(間中 知幸)
